しまうま

バンク・ジョブのしまうまのレビュー・感想・評価

バンク・ジョブ(2008年製作の映画)
4.0
 1971年に実際に起きた銀行強盗事件「ウォーキートーキー強盗」をモデルにしたサスペンス。ジェイソン・ステイサム主演。
強盗に遭った銀行の貸金庫には多くの現金や宝石と共に、スキャンダルなネタが複数保管されていた。それらを巡って、強盗集団、情報機関MI5、ポルノ業者、警察らが交錯する。最後に勝つのは誰だーというのが大まかなあらすじとなっている。

 実話を元にした映画というものは『死霊館』シリーズであったり、『エリン・プロコヴィッチ』『アンタッチャブル』など名作が多い印象がある。今作もそれらに負けないくらいのスリリングな時間を与えてくれた。

 ジェイソン・ステイサムというと、どうしてもド派手なアクションのイメージが強いけど、今回は『スナッチ』のほうの、頭の切れるチンピラのステイサム。それも前者よりシリアスな人物像で、こちらがイライラしない程度に恋愛要素も絡めてくる。

 映画が始まって30分ほどは少しまだるっこしい展開というか、印象的な場面も無くはないけど、登場してくる人物たちの紹介も兼ねて、イギリスの様々な階級に属する人たちの光景を見せられる。
 退屈を感じなかったといえば嘘になる。ただ、事件が起きてからの目まぐるしい展開に、すっかり画面の中の世界に入り込んでしまっていた。

 息もつかせない情報の攻防、ある一味の仲間を捕まえて拷問する場面も盛り込まれていて、意外とえぐかったりもする。原因がスキャンダルネタということもあって、下世話なネタを、国家機関が躍起になって取り返そうとする姿勢は、シリアスなんだけど滑稽にも感じられる。

 最後、エンドロールが流れ終わるまで「ああ、良い映画を観た」と余韻に浸ることのできる、文字通りの名作だった。
 舞台がイギリスということもあってか、出てくる街並みの景色や人々の服装、小物などがいちいちオシャレな感じがするのも、その余韻に一役買ってくれていたのかもしれない。



---ここから少しネタバレ。


 この映画の公開は2008年。
 スキャンダルネタのひとつは、現実では2002年に亡くなったマーガレット王女の、セックス写真という設定がある。まあそれは「作られた設定」だと思うんだけど、いくら故人とはいえ(いや、故人だからか?)王室のそういうスキャンダラスな描写、というものがおおよそ平然と成されていることに、僕としてはわりと驚いた。


 物語の最後は実話系あるあるにはなるけど、実際の事件に関わった人物たちの「その後」の報告がテキストでされていた。そういうリアリズムもひしひしと感じることができる、極上のサスペンスを観ることができてよかった。心からそう思う。
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