チッコーネ

ヘッド・オン!のチッコーネのレビュー・感想・評価

ヘッド・オン!(1998年製作の映画)
3.5
主人公のアグレッシヴな言動が、物語全体を支配している。
その焦燥へ呼応するかのように、カメラはやたらと俳優へ肉薄する。
序盤はテレビドラマっぽい照明に漂う素人っぽさが気になったが、観進めるうちに忘れてしまった。
こうした勢いは90年代ゲイ映画ならでは、という感じ。

とは言え本作はセクシュアリティのみならず、『2世の若者が抱く、移民コミュニティへの愛憎』を描くことにも力を注いでいる。
ゆえに米国産ニュー・クイア・シネマより、英国産ゲイ映画に近い雰囲気を持っていた。
オーストラリアに根付くギリシャ人の生活、そしてエキゾティックなカルチャーを垣間見れるのは面白い。

また個人的には『根深い自己嫌悪に苛まれる主人公が、確信犯的に愛なき世界を駆け抜けていく姿』に、共感を覚えた。