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死闘の伝説のもとまちのレビュー・感想・評価

死闘の伝説(1963年製作の映画)
4.1
二次大戦末期という極限状態が、山間の小さな村に凄まじい狂気をもたらす。村長の息子との縁談を断ったことをきっかけに、疎開者一家へと行われる激しい村八分。はけ口を見つけたのを良いことに、戦時下で溜まりに溜まった不安や怒りをすべてそこへ叩きつける醜き村人たち。無意味な憎しみは時間が経つほどに増大し、人々は正気を失い、やがては血で血を洗う殺し合いにまで発展していく。人間の剥き出しの本性を徹底的に抉り出す衝撃の作品。なによりこれを撮ったのが名匠・木下恵介であるという驚き。娯楽性は極力排除されているが、カメラの横移動とスピーディーな編集を多用した終盤の銃撃戦には、アクション部分の演出力の高さもしっかり感じられる。シネスコを活かしたロングショット一つ一つの端正さも素晴らしく、悲劇を繰り返す人間と荘厳たる美しい自然の対比を強固なものにしていた。全編に渡って不気味に鳴り響くアイヌの弦楽器がトラウマ的な怖さ。
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