レオン

パンズ・ラビリンスのレオンのレビュー・感想・評価

パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)
3.7
戦争ヒストリーにダークファンタジーをうまく絡めた佳作だが、どうもギレルモ監督は今作以後にもサッドエンドやバッドエンドが多く、ギレルモタッチとも言える要素を暗示させる作品となっている。

まず冒頭、巨大ナナフシのリアルさに、「本物」を穴に押し込んで出てくるところを撮ったのかと思ったが、その後のあり得ない動きでCG(あるいは特撮)と分かり驚愕する。 ヒーローアクションでお馴染みのCGだが、こういう細部の緻密映像でコンピューター(作り物)を意識させない映像こそ真価を発揮してると思う。

それに人物描写が抜群。
芯の強そうなメルセデスや、独裁的な大尉など、
役柄の性格を容姿でも表現出来る役者に拘ったキャスティングがいい。

特に大尉は、傲慢で残忍だが自ら最前線にも立つなど、嫌われ役にも軍人としての本分は見られる描写に納得する点も。 映像的には自分で口を縫って、包帯にアルコールが染むシーンはモニターに釘付けにする。

主演の少女 イバナ・バケロ も何をしても同情してしまうような健気さに惹かれる。 惜しいのは葡萄を食べてしまうシーンが何度も妖精に制止されるのを無視するのが、少し過剰に感じる。 私が監督なら、それまでの物語に葡萄には目がないというシーンを挿入して、通り過ぎようとしたが、目に入った葡萄に我慢出来なくなってつい・・と自然に見せたと思う。

チョークで窓を作るとか、蛙とのリアルな対峙、手が目になるペイルマン等見どころも多いのだが、ラスト・・・。
なぜこれほど、無慈悲なエンディングに・・・。
幻想の中ではハッピーエンドでも、パンに出会わなければ、現実でもあの場を離れ残った者と幸せになれたのでは・・。

主要な登場人物を死なせる事は、作品に深い余韻を与える手段の一つだが、逆にネガティブ要素も増えてしまう。
それが他者を助ける為など、必然的な事なら納得だが、大人が子供を・・・。 
惜しい・・もっと見る者(視聴者)をも救うようなエンディングなら★がもっと増えたと・・。
でもギレルモ監督はそうしない(脚本も書いている)から、ギレルモ監督なのか・・。

余談だが、究極の無慈悲は「ダンサー・イン・ザ・ダーク」。 あんな見る者をも奈落の底に突き落とすような作品は、作ってはいけないとさえ感じる。(エンディング以外は素晴らしく低評価はしないが・・)
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