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パンズ・ラビリンスのNMのレビュー・感想・評価

パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)
3.3
舞台は1944年、独裁政権下のスペイン。
市民は圧政下で喘いでいた。

別世界へ行きそこで冒険するのではなく、そもそも行けるのか行けないのか、がメイン。
そしてその別世界は本当にパラダイスなのか、現実社会の人々はどうなるのか、も問題。

ギレルモ監督の、異形であっても対等に渡り合えるか、といった独自の持ち味が通底する。

一般的なファンタジーではない。冷徹な大尉の暴力や妖怪の衝撃的描写などが多く、美しい世界は全然出てこない。

子どもが主人公だが、子ども向けかというとR12だし違うと思う。
結末も甘くない。何人も悲惨な死を遂げる。

魔法の国へ導くのも、かわいい小動物ではなく、虫。
入国の資格を問う3つの試練も、単なる勇気や愛情を問うだけものでなく、偏見のない知恵や自己犠牲を問うもの。
旅の入り口も、暗い廃墟の地下という他にあまりない設定。

パンの自己紹介が印象的。
「私にはあまりに多くの名前があります。どれもとても古い名前ばかりで
風や木々しか発音できません。私は山であり 森であり 大地なのです。」
神秘的で、詩的。

そして、最初は驚いた彼の強烈な外見も慣れると、知性も凶暴さも感じられる。
パンは何者なのか。

ファンタジー以外に、現実のスペインの圧政下で、侍女・メルセデスが挑む生死を賭した挑戦ももう一つの見どころ。

実は息子が欲しいだけの冷徹大尉は、妊娠したカルメンを断ったのに車いすで移動させる。
これは要注意。
妻を敬うようにみせて、何もできないと決めつけ、実際何もできないお飾り人形してしまう、という悪夫は映画によく出るキャラ。
この大尉はいつも髭剃りしたり靴磨きしたりして、自尊心が高いことを感じさせる。

何が幻想で現実かは分からない。
本当だったと取るか、幻想だったと取るかは観る人に委ねられる。

最後にオフェリアだけに見えた世界は、冒頭朗読される物語に繋がる。
観ている間に忘れてしまったら、もう一度戻ってそこだけ見直すことをお薦め。

メモ
パン神……半身半獣で、ヤギの角がある。
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