M少佐

パンズ・ラビリンスのM少佐のレビュー・感想・評価

パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)
4.0
 「あなたも私も魔法なんてない!」

スペイン内戦は終結するもパルチザンの残党とファシスト政権の軍隊との戦いは続く。
最前線の駐屯地の独裁的な軍人「大尉」
その元へと嫁いで来る身重の女性。
既に胎内に大尉の子を宿す。
幼い娘も同伴だが大尉は義理の娘はどうでも良い。
これから生まれ来る男子(思い込み)にしか興味はない。
娘は新たな父を受け入れず母は現実を受け入れろと娘に促す。
優しくしてくれる人も居るが娘には居場所がない。
しかしある夜、娘は妖精に導かれ森の守護者「パン」に出会う。
悪魔の様な容姿のパンにそそのかされ、娘は試練に立ち向かう。
魔法の国のプリンセスになる為に…

これまた日本人には馴染みの薄いスペイン内戦。
娘を苦しめる極悪な大尉は利己的な軍人。
残酷で酷薄、愛情の少ない男。
家族の情けは欠片程しかなく跡取りの事にしか興味なし。
ヒロインは自分にも、ともすれば母にすら子作りの機械程度の感情しか抱かない大尉に心情的に追い詰められる様子は辛かった。
外の世界は戦争。
身近な世界は不幸。
ヒロインが逃げ込む場所はファンタジー。
それとて現実が追い討ちをかける。
戦争による残酷や血まみれやグロシーンは苦手な人は辛い内容かもしれない。

とても面白く、何よりクリーチャーの造形が夢に出るほど気持ち悪い。
そのクリーチャーを際立たせる時代背景、衣装、小道具に至るまで素晴らしい。
アカデミー美術部門三冠は伊達ではなかった。

色々な捉え方の出来るエンディングはかなり好き。

誰にも優しくないファンタジー。
M少佐

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