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恋のエチュードのTPのレビュー・感想・評価

恋のエチュード(1971年製作の映画)
3.9
★1990年に続き2回目の鑑賞★

 時代は1900年代初頭頃だろうか。イギリスの海辺の田舎の風景(撮影は仏ノルマンディーらしいが)や平均的な家庭の屋内の装飾や構造、蠟燭の光や画的な構図は文学的な魅力にあふれているし、フランス語と英語が入り混じったセリフやフランス語でのナレーションも私には心地よく、映画全体として芸術性を感じさせる(近年の作品だと「燃ゆる女の肖像」に近い)。

 姉妹の思想や行動がなかなかに奇抜なところはあるが、テレビもラジオもない時代に、田舎で常識的に育てられた女性という前提で考えれば、私には合点がいく。
 それまで接したこともなかった若くて学がある優しい男を巡る姉妹の策略やあきらめ、情熱と優越感などが入り混じった複雑な感情は、今は忘れた若いころの瑞々しい記憶を呼び起こし、切なささえも感じさせる奥深い作品。

 しかし残念なのが、姉妹に愛される対象となるクロードの描き方で、母親の過保護の下に育てられたクロードは性格的にも肉体的にも魅力大とは言い難く、また、演じたジャン=ピエール・レオが小柄で優男風であることも拍車をかけ、美人姉妹が彼のどこにそこまで魅かれるのかがピンとこないところ。

 相反する魅力をたたえた美しい姉妹を演じたキカ・マーカムとステーシー・テンデターがとても素敵なのだが、本作以外の出演がほとんどないのが残念。
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