映画漬廃人伊波興一

恋のエチュードの映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

恋のエチュード(1971年製作の映画)
4.3
どこか焦らされている気さえするほど中々予感を容易に適(かな)えさせない、トリュフォー生来のリズムが遺憾なく発揮された傑作!
フランソワ・トリュフォー
『恋のエチュード』
トリュフォー特有のフェチやエロスの機軸がぶっきらぼう過ぎないか、と難色を示した方も私の周りにいますが、そんな事より性的な事由を倫理的に扱う姿勢そのものが忘れがたい官能や叙情を醸し出している気がします。
『恋のエチュード』も物語である以上、それなりの結末が用意されています。
イギリス舞台の前半からフランス舞台の後半にかけて美しい姉妹の間を右往左往するジャン=ピエール・レオの行く末に待ち構えるのは、情念の炸裂でも運命の残酷さでもありません。
そしてその予感を容易に適(かな)えさせない点にトリュフォー生来のリズムを探るべきだと思います。
能や狂言に全く疎い蒙昧なわたくしでも知っている世阿弥の『風姿花伝』にある言葉。
(秘すれば花)が頭によぎりました。