こぅ

遠い声、静かな暮しのこぅのレビュー・感想・評価

遠い声、静かな暮し(1988年製作の映画)
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'23 9/19日本版ジャケ写に変更していただきました。

幻のカルト人気作、㊗︎初ソフト化(6/7発売)記念レヴュー。

イギリスの名匠テレンス・デイヴィス監督が'88年に発表した長編第1作で、自伝的2部構成による、【ファミリー・ドラマ】。

【第41回カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞作品】。

1950年代のイギリス、リバプール。
長女アイリーン(アンジェラ・ウォルシュ)の婚礼の日の朝、アイリーンと妹のメイジー(ロレイン・アシュボーン)、弟のトニー(ディーン・ウィリアムズ)は、亡くなった父親(ピート・ポスルウェイト)のことを回想していた。
ちょっとしたことで怒り出し、時には暴力を振るう横暴な父だったが、それでも家族はみなそれぞれに愛していた。
やがてメイジーとトニー、友人たちもそれぞれに結婚して家族を持つ…。


[第1部:約44分]
冒頭過ぎの
父親の葬式の当日、
階段の長回し〜一見何気ない演出が、おっ!となる。
これは前代未聞かな⁈
そこに被る 歌 もまた本作の出来を象徴しているようで素晴らしい!

そして、
いきなり長女の結婚式家族撮影に移行、
その構図から1人1人の父親との回想にスムーズに入るが、、中々激しい、、

エピソードは、
時系列バラバラ(【メメント】並)で短いシークエンスで目まぐるしく畳み掛け、飛ぶ構成だが、家族内の話が主で、サスペンス/スリラーでは無いから一字一句把握する必要は無く、概要が分かれば良いとした。
拷問級の展開なのに観ていてナチュラルに繋げて違和感を感じない、或いはそう感じさせないのは凄い!!
随所でシークエンスを被らせている技あり。

頑固一徹で、
娘にも暴力を振るう、踊りに行くのに門限やらにやたら五月蝿い厳格な父、そして死、子供達それぞれの結婚、固い家族の絆、、憎まれても愛された父。
母(フリーダ・ダゥウイー)は、大きな出番こそ無い脇役ながら、ずっと家族に寄り添っていた印象。

カメラは極力
動かさずに構図をビシッと決めていて(落ち着いていて)心地良い。

2年後に撮った
[第2部:約40分]
次女、メイジーの長女、エレインの出産から始まり、
長男、トニーの結婚で締める。
作風はガラリと落ち着いて、父親は出て来ない。
愛する者がいなくなっても残された者の人生は続くのだ。

2in1シークエンス(撮影)もある。

EDロールの余韻も良き。


総評:
全編通して大きな出来事が起こるわけではない、寧ろ暗いエピソードを含む家族ドラマなのにミュージカルの如き、良い歌を合唱、散りばめてウエットには仕上げていない作風が一番の好感。
日本人が好みそうな、横暴でも愛されていた父、家族の絆、綺麗事じゃない人生が詰まった、所謂、アメリカンの甘ったるい家族像がここには無いが尖ってもいない。


ビンタレベル★★★★☆
こぅ

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