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映画史のsonozyのレビュー・感想・評価

映画史(1998年製作の映画)
4.0
1998年、ゴダールが10年の歳月をかけて作り上げたという大作。
DVD5枚組(全8章)合計4時間28分 やっと見ました。

書斎で葉巻をくゆらせ、タイプライターに向かうゴダール。
膨大な数の映画、ニュース映画、絵画、アート、写真、小説、詩、哲学、女優、監督..etcの映像、台詞、画像、テキスト…の断片やゴダールの声を主とするナレーション、多様な音楽を引用したコラージュ・モンタージュ。
※DVDには引用注釈画面(浅田彰 総合監修 3,075ページ!あるらしい)モードがあるので、多くの引用作品について知ることも出来ます。もちろん知らない作品が多数。

ゴダールなので、引用といっても、粗い映像やコマ落ち、エフェクト、彩色、復数のナレーションの混在など、当然ながら分かりやすいものではないので、順次見ましたが、各章のテーマも内容もほぼ記憶にとどまらず(笑;)、ゴダールの頭/身体に蓄積された映画・アート・文学・音楽の知識・論考・感性の渦に身を委ねたという感じでしょうか。

ここには各章ごとの項目が立ってますが、それぞれプロダクションノートの抜粋的なメモをまとめて。

1)すべての歴史
1930年前後のハリウッドのプロデューサー、アーヴィン・タルバーグ、ハワード・ヒューズ関連の作品や、オーソン・ウェルズ「ドン・キホーテ」など未完に果てた映画。
ナチスドイツ侵攻、戦争に関する作品。ファスビンダー「リリー・マルレーン」、アンジェイ・ムンク「パサジェルカ」、ロッセリーニ「ドイツ零年」など。

2)ただ一つの歴史
ジョン・カサヴェテスとグラウベル・ローシャに捧げられる章。
『白昼の決闘』『軽蔑』などから、映画は性と死にとりつかれた“化粧品の産業”や”嘘の産業”といったシニカルな視点や、写真の相続人としえの映画、映画技術、サウンドの設計などの考察も。

3)映画だけが
ヌーヴェル・ヴァーグの世代こそ歴史を語るにふさわしいとする映画評論家セルジュ・ダネーとゴダールの対話から、投影=映写の起源。様々な姿のジュリー・デルピーがボードレールの長編詩『旅』を朗読し、『狩人の夜』『大地』などの引用。

4)命がけの美
誕生や死、美、命がけの瞬間。「男はいつもピストル=性器の高さ、女は胸の高さでフレーミングされた」と語るゴダール。女優ザビーヌ・ゼアマが語る長いテキスト。テクニカラーの登場など。

5)絶対の貨幣(マルローの美術に関する著書に由来)
思考する形態を開始したマネの絵画こそ映画が受け継いでいるもの。
第二次大戦と映画。ジュリエット・ビノシュの朗読する詩。『無防備都市』などイタリアのレジスタンス映画とその後のイタリア映画黄金期への賛美。

6)新たな波
ヌーヴェル・ヴァーグを振り返るゴダール。『アルファヴィル』『大人は判ってくれない』.. ヌーヴェル・ヴァーグはラングロワの博物館から生まれた。「作家ではなく、作品だ。」

7)宇宙のコントロール
ヒッチコックへのオマージュ。彼は「最も偉大なフォルムの発明者」で、ドライヤーと共に奇跡を撮影できた数少ない芸術家だ。『フォーエヴァー・モーツァルト』の引用など。

8)徴(しるし)は至る所に
映画史上の愛のかたち、拷問された人々や収容所の写真、ヒトラーとチャップリン、ゴダールの90年代作品、小説や歴史論など多数。
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