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花と怒涛のodyssのレビュー・感想・評価

花と怒涛(1964年製作の映画)
3.0
【山本陽子の映画デビュー直後の作】

大正時代の肉体労働者たちの組(昔のヤクザ)をめぐって、対立抗争が繰り返される中で、訳あって妻(松原智恵子)を隠して組をまとめている男(小林旭)の人生を描く映画。

本来、主役である小林が大活躍するはずなんだろうと思うけど、どういうわけか、或いはもともとそういう意図で作ったのか、主役があまり活躍しない。むしろ、人情ある老親分だとか、小林に惚れている芸者という役柄の久保菜穂子だとかの活躍が目立っているのだ。小林旭は彼らに比べるとどうも冴えない。脇役を立てている主役、という構図の映画だ。

加えて、この映画は山本陽子の映画デビュー直後の作である。彼女の名は初めの配役表に出てくるが、最初や最後ではなく、中段のその他大勢的なところに何人かと並べて出てくるだけである。

なので、私も、最初は「あの山本陽子なのかな、それとも同姓同名の端役の女優がいたのかしら」と思ったが、見ていたらあの山本陽子で、芸者衆の一人として出てきていた。セリフもないから端役には違いないが、それにしては彼女が映される時間が長いのである。きわだった美貌だから撮影する側も無視できなかったのであろう。

ウィキによると、山本陽子の最初の映画登場作はこの『花と怒涛』の前年末の『光る海』で、この『花と怒涛』に出る前は『光る海』を含めて3作に出ているが、いずれも端役だった。

しかし私の見るところ、この映画では松原智恵子や久保菜穂子よりセリフのない山本陽子のほうが美しい。主役の小林旭が冴えないことといい、男女とも主演が食われた映画になってしまっているのである。
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