noritama

クンドゥンのnoritamaのレビュー・感想・評価

クンドゥン(1997年製作の映画)
3.9
ダライ・ラマ14世の幼少期から、チベットが中国に侵攻されてインドに亡命するまでを描いた半生記。スコセッシ監督にしては演出や脚色が控えめで、大学の歴史の授業に出てきそうだった。とはいえ内容は非常に興味深く、全く退屈せずに最後まで鑑賞できた。ダライ・ラマは常にジョークを飛ばしているお茶目なおじさんのイメージが強かったため、至って真面目な青年として描かれていたのは意外だったが、村の子どもの中から次のダライ・ラマが「発見」される過程や、砂曼荼羅や鳥葬など、チベットの文化や風習を美しい映像で観ることが出来て興味深かった。後半では中国が共産党政権になり、チベットへの圧力が加速。菩薩様の生まれ変わりとはいえ、あれだけ横暴の限りを尽くされたのに、とことん非暴力を貫いたのは本当に凄いと思った。チベット民の死体の山のなかで一人立ち尽くす悪夢にうなされる場面や、自分がダライ・ラマであることに自信が持てなくなり、側近の僧侶に「間違った子供を選んだと思ったことはないか?」と問うシーンなどは、若き日のダライ・ラマが味わった苦悩を端的に表していて、印象的だった。この映画を観ると中国共産党に対する猛烈な怒りが湧いてくるので、中国で上映禁止になり、米国でも上映中止を求める圧力がかかったのも頷ける。今だったらこの内容だと製作すらできないのでは?大昔に鑑賞した「セブン・イヤーズ・イン・チベット」も再度観てみたくなった。
noritama

noritama