いろどり

クンドゥンのいろどりのレビュー・感想・評価

クンドゥン(1997年製作の映画)
4.5
中国のチベット侵攻によるダライ・ラマ14世の心痛を、「リトル・ブッダ」でも出てきた砂の曼陀羅の無常観で詩的に表しているのが素晴らしく、生々流転を受け入れながらもチベットの魂を守り抜こうとする若きダライ・ラマ14世の力強さに胸を打たれた。チベット仏教の文化をかなり神秘的に見せていて、以前より興味のあった鳥葬の様子も詳しく描かれていて食い入るように見た。

満州民族に200年以上も支配され、ようやく日の目を見た漢民族の天下である今、チベットやウイグル、内モンゴルへの支配の手を緩めるわけもなく、ダライ・ラマ14世亡き後、多くの血が流れないことを祈るばかり。「毛沢東主席のおかげで幸せです」と言わなくてはいけないチベット人の涙と壮大な自然が印象的。

まさに国破れて山河あり。かつて「中国人」が読んだこの歌は回りに回ってまた「中国人」が読むことになるのではないか。異民族排他思想でいる限り、因果応報の未来が待ち受けているように思えてならない。人を選ぶかもしれないけど、これは人におすすめしたい作品。
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