しょう

クンドゥンのしょうのレビュー・感想・評価

クンドゥン(1997年製作の映画)
3.7
5年ぶりくらいの鑑賞

ダライ・ラマ14世がインドへ亡命するまでを描いた伝記映画

“クンドゥン”はチベット人がダライ・ラマに敬愛と親愛の情を込めて呼ぶときの尊称らしい

本作では中国のチベット侵攻の悲惨な現実と国民を守るためにインドへの亡命を決意したダライ・ラマ14世という人物はどう成長し苦悩したのかをとてもわかりやすくリアルに見せてくれる
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やっぱりスコセッシの作品が大好きなんだなと身に沁みて感じた

開始5分でそのカメラワークとエンタメ性の高さに惚れ惚れし、音楽やカット割りも余すとこなく好きだった

完全にダライ・ラマ目線(チベット目線)で物語が進む本作は、チベット仏教と化身ラマの名跡「ダライ・ラマ」の継承が、チベット自体でとても大事にされていることが丁寧に描かれている

仏教国であるため、国民が仏教の信念や教えをどれだけ大事にしているのかが改めて伝わった

"私はただの男 仏に仕える1人の僧
私は月の影 水面に映る月の影
善を行い 自己に目覚める努力をしている者"

彼の言葉は一言一言が身に沁み心に響く

そして本作では中国の侵攻によるチベットであった悲惨な状況を思わせる描写が多く出てくる

何もない場面でもダライ・ラマ14世にはこう見えたという目線や夢で見た事などがしっかり映像として描写されており恐ろしくなった

ダライラマ14世今でもチベットへ戻ることができず、中国としては反逆者として国際的に要注意人物として警戒してる状況であるため、本作公開時には様々な圧力があったらしいが、チベットの現状を伝えるために本作は今後しっかりと残していかなければいけない作品だと思った

作品中には僧侶達が砂絵を地道に描く姿が挟まれていたが、この砂絵こそがダライラマ14世と重ねた比喩的な表現であり、視聴者への教えなんだと感じる

とても好きなシーンの一つだ

ダライラマ14世の青年期の俳優さんはダライラマ14世の実際の甥の息子だそうだが、とてもリアリティーがあって本作のベストアクトだった

最後まで見入ってしまう素晴らしい作品です
しょう

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