千年女優

クンドゥンの千年女優のレビュー・感想・評価

クンドゥン(1997年製作の映画)
3.5
1937年、チベット東部アムドにある田舎町。農家に末っ子として生まれた少年で、訪れた高僧の数珠を見て「僕のものだ」と言い放ったラモ・ドンドゥプ。次々と三年前に崩御したダライ・ラマ13世の遺品を言い当てて「クンドゥン」と呼ばれるようになった彼が、第14世として育ってインドへ亡命するまでの数十年間を描いた伝記ドラマです。

『E.T.』を手掛けた脚本家のメリッサ・マシスンが本人インタビューを経て書き上げた物語を彼女の希望で声をかけられたマーティン・スコセッシ監督が映画化した1997年公開の作品で、チベット問題に絡むとあって中国政府の圧力で公開が制限されたために興行収入は600万ドル足らずに留まりましたが批評家からは一定の評価を獲得しました。

人生を二時間で語る伝記映画の限界を感じる所はあって、全体としてはエピソードの羅列に留まる印象は否めません。それでもただ生い立ちを追うだけではなくユニークで豊かな文化がある描写を欠かさぬことでマイノリティの尊重を訴え、そんな主題をオスカー常連の名撮影監督ロジャー・ディーキンスの重厚なカメラが捉えている一作です。
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