AY

クンドゥンのAYのレビュー・感想・評価

クンドゥン(1997年製作の映画)
2.5
常識以上にはチベット仏教の前知識を持たずに観たため、どの程度アメリカナイズされているのか分からなかった。

宗教としてのチベット仏教を期待していたが、思っていたよりも政治的な話だった。当然、避けては通れない問題だけど。
同じスコセッシ監督の「沈黙」でも内的な宗教観の描写がいまひとつ、というレビューを目にしたけどどうなのだろうか。まだ観ていない。
監督のスタンスは分からないけど、政治的な利権や歴史だけでなく、チベットが独立を主張しダライ・ラマを守ろうとする内的な要因を描いても良かったのではないか。

歴史的経緯は分かっても、なぜチベットが命を賭してまで独立を守りたいか、ダライ・ラマを亡命させたいかが見えてこない。これでは信仰にある程度素養のある人ならまだしも、唯物論者や無神論者には決して通じないだろう。
中国を悪として、善悪二元論的に描かれているのも気になる。毛沢東が露骨に失礼で、本当にああいう言い方をしたのだとしても、本当に中国側が一方的に侵攻してきたと言っても、それをそのまま描くだけでは単にチベットが売られた喧嘩に抵抗しているようで、深い苦しみのなかでの決断の意味が見えず説得力に欠ける。
言いたいのは、「中国が侵攻した、チベットは独立を主張している」というだけでは事実でしかなくて、もっと根深い問題があるのではないかということ。それを描かなければ迫ってくるものがない。観者の想像力任せ、と感じた。

とはいえ、ダライ・ラマ役と、時折入る宗教者らしい台詞、もっと知りたいという気持ちを起こさせてくれたことはよかった。
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