ーcoyolyー

クンドゥンのーcoyolyーのネタバレレビュー・内容・結末

クンドゥン(1997年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「クゥンドゥン」Jcomオンデマンド入れたら5/26までの配信だったのでiPadで映画デビューしました!
スコセッシこれよく撮れたなとあらゆる面で思う。題材がダライラマ14世の亡命まででキャストオールアジア人(ダライラマが宮殿に入るところで出迎えの人の中に一人だけ白人いた?あの人セブンイヤーズインチベットの人?)でほぼ素人!まるでエンタメ要素がなくストイックに拘ったのとても良かったんだけど、これのせいで「沈黙サイレンス」撮ろうとした時に苦労したのもわかる…興収完全無視で作るスコセッシの賢者モードへの警戒は生まれるよなと…
でも役者としては素人だけど、ダライラマのそこまでの歴史を描くということは彼らの信仰としての重大なミッションであるので、下手に役者使うより真実の心をストイックにフィルムに反映できててそのことにスコセッシがひたすら敬意を払ったことも伝わってきます。ダライラマ14世の親戚よくかき集めたなと。

1997年作品、セブンイヤーズインチベットも1997年作品で1997年は香港返還の年。そして2020年5月下旬にこの映画を観ると中共が香港でやってることと全く同じで中共はいつも同じ手口でチベットもウイグルも内モンゴルも潰して侵攻してきたし、香港も台湾もこの手口で牛耳ろうとするのがそのまま過ぎてゾッとします。今香港で起こってることがよくわかる、そして結末まで等しくさせたくないなと思う。
アンジェイ・ワイダの「カティンの森」を観た時にソ連軍がポーランド人の魂であるショパンを大変けたたましく勇壮に演奏したフィルムを流してて彼らの魂を蹂躙している描写がダイレクトに流れ込んできて大変辛かったんですけど、紅衛兵に中国を称賛する歌を歌わせてるシーンが全く同じ辛さで入り込んできました。音楽の力ってこんなにも強大なのかと、音楽によって蹂躙され、辛さもまた急速に増幅されてゆくこと、映画表現の演出においては非常に効率的なのかなと思いました。でもこんなに真っ正面から中国批判しちゃうの大丈夫?と今観ると思ってしまう。今なら撮れないだろうなと思う。90年代末期、チベタンフリーダムを叫ぶムーブメントが盛り上がっていた頃は大分遠ざかってしまったんだなと悲しくなっている。
スコセッシって清濁合わせ飲むというより自分の中の聖と俗が完全に棲み分けされていて、彼のコアな部分からそれを表現する時に聖なるルートを取るのか俗なるルートを取るのかで結果的に作風の振り幅大きくなってるような気がして、これだけ一人の人間の中に極と極が一緒に存在していると生きづらそうだなと思います。どっちサイドの作品でも本人のコアな部分は変わってないんですよね実は。
そんでチベット仏教を描く際にダライラマの生母と聖母、数珠とロザリオが重なって見えたので、そうやってカトリック信仰のこの人はチベット仏教に近付いたんだなと思いました。
ーcoyolyー

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