シンタロー

錨を上げてのシンタローのレビュー・感想・評価

錨を上げて(1945年製作の映画)
3.7
ジーン・ケリー&フランク・シナトラ主演のミュージカルコメディ。
4日間の特別休暇を与えられた水兵のジョーとクラレンスはハリウッドに向かう。社交的なジョーはガールフレンドと楽しもうと大はしゃぎ。奥手なクラレンスはいつも図書館で過ごしていたが、今度こそ彼女を作るため、ジョーにコツを教わろうと付いてきたのだった。ひょんなことから海軍に憧れる迷子の少年ドナルドを家まで送る羽目になった2人は、彼の唯一の身寄りである叔母のスーザンと出逢う。歌手の卵で美しいスーザンにクラレンスは一目惚れしてしまうが…。
大学の映画研究会でジーン・ケリーの大ファンの友人に勧められて、彼の映画はいろいろ観ましたが、自分はフランク・シナトラの歌声に聴き惚れてしまったという、お恥ずかしい昔のことが懐かしい。本作がアメリカで公開されたのは1945年7月。日本がポツダム宣言を受諾する直前のことで、日本公開は8年後。戦時中にこんな陽気でハッピーな映画が制作できるアメリカのエンタメ界って凄いわ。ストーリーは他愛もないもので、とにかくジーン・ケリーのダンスと、フランク・シナトラの歌に浸る、ちょっと長めの140分。あまりにも有名なシーンはトム&ジェリーのジェリーとケリーが踊る、歴史を変えた実写とアニメーションのコラボレーション。当時のアメリカの映画ファンを夢中にさせて、この年の全米興行成績第5位の大ヒット。振付師も担当したケリーはミッキーマウスとの共演を熱望したそうですが、残念ながらディズニーと折り合わず断念。しかしながら楽しい名シーンに仕上がってます。ケリーが先住民の少女と踊るシーンは、切ない想いが伝わってくる素晴らしい出来栄え。シナトラの歌では"I fall in love too easily"のピアノ歌唱。何度観ても鳥肌が立ってしまう。本当に素敵な声してるわ。ウェイトレスのブルックリンに歌う"The charm of you"もうっとり聴かせてくれます。テクニカラーによる映像は近年さらに美しく復元されていて、80年近く経っている作品とは思えません。
配列では3番手扱いですが、実質主演はジーン・ケリー。フレッド・アステアと比較されることが多い方ですが、優雅で美しい気質のアステアに対して、筋肉質で体幹がしっかりしていて、身体能力の高さとトレーニング量を感じさせます。一方でドヤ顔というか、上手いだろ俺って感じが鼻につく人もおるようですが、エンターテイナーとしては最高のプロだと思います。ケリーとは名コンビになるフランク・シナトラ。背が低くて痩せていて、顔もファニーフェイスの類だと思いますが、アメリカでは若い女性の追っかけも存在するほどのアイドル的人気でした。魅惑的な歌声と少年っぽいルックスのギャップは魅力なのかも。後にヤンチャな私生活が露わになっていきますが、この役柄からは想像もつきません。いろいろな意味で伝説的な存在の方ですね。ヒロインはキャスリン・グレイソン。ミュージカル界のソプラノ歌手として、本作の監督ジョージ・シドニーのお気に入り。上手いのはわかるけど、自分は好きな声ではありません。ドナルド役は子役時代のディーン・ストックウェル。デビュー作です。スランプ期を経て、80年代頃から名バイプレイヤーとして復活。「パリ、テキサス」「ブルーベルベット」等で名演を残しています。
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