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コーリャ愛のプラハの一人旅のレビュー・感想・評価

コーリャ愛のプラハ(1996年製作の映画)
5.0
第69回アカデミー賞外国語映画賞。
ヤン・スヴェラーク監督作。

冷戦末期のプラハを舞台にチェロ奏者ロウカとロシア人少年コーリャの交流を描いたドラマ。
チェコとソ連。同じ共産圏といえど対立の激しかった両国。ソ連による軍事介入によって緊迫した政情をよそに交流を深めていくロウカとコーリャ。ソ連国旗を指差し「僕の国の旗の方が綺麗!」と豪語するコーリャに悪意など微塵も存在しない。一方、周囲の大人たちはロシア人のコーリャをロウカが預かることに対して否定的な態度を取るのだ。それはもちろん、ソ連当局に目をつけられるからという理由もあるが、それ以上に敵国ソ連に対する反感がそうさせている。だが、子どもであるコーリャに罪は無い。チェコとソ連の関係において被害者がチェコであることに疑いはないが、怒りや憎しみの種を大人が蒔き、それを子どもが拾い上げてしまったら負の連鎖はとどまるところを知らなくなってしまう。
ロウカも始めは“ロシア人”としてコーリャを認識していたが、やがて“息子”として接するようになっていく。人と人の結びつきを最終的に決定づけるのは、国籍や民族といった外形的事実ではなく真心であることを改めて教えてくれる作品だった。
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