「ロウカ、大変なことになった。ナディズダが国を出た。息子を置き去りにしたんだよ」
チェコ版『菊次郎の夏』。女たらしの55歳チェリストが小金欲しさにロシア人のシングルマザーと偽装結婚し、子供を置いて逃げられてしまう話。
社会主義崩壊直前のプラハに変なエモさがあって、映像と音楽がいちいち美しい。自然も街並みも夕景もグッと来る。
コーリャと出会ってからのロウカが行動力オバケになっていくのが面白くて、車ぶっ飛ばして友人宅に身を隠しに行ったり、女友達に電話で本の読み聞かせ頼んだり、やってることがストロングスタイルでなんか笑ってしまった。人間関係に奔放な55歳独身男性が、初めて"簡単に断ち切れない関係"を知ってしまうことの危うさ。二人の関係が丁寧に構築された分、ロウカとコーリャが地下鉄ではぐれちゃった時はマジで焦った笑
ラストもちょっぴり切ないけど温かな終わり方で良い。子役の子の演技も秀逸な作品。
以下、セリフメモ。
「交響楽団を追放された理由は?一流の演奏家なのに」
「トラバントが欲しいならなんとかなるぞ。君にいい仕事を紹介しよう。1日3万コルナだ」
「偽装結婚だよ。相手はロシア人。夫婦のフリで4万コルナだ。6ヶ月経ったら離婚すればいい」
「ソ連の役人にいくら賄賂を渡したと思う?」
「…知らない方がいい」
「妻の連れ子を育てれば偽装結婚を疑われない」
<Наш красный! (僕たちの旗はきれい)>
「上映や必要な人数は何人?5人か。チケットを5枚くれ」
「いくらでも馴れ馴れしくするよ。私の裁量で君を罪人にもできる」
「もっと自分勝手な人かと。他人の子を信頼するなんて意外よ」
「俺もだ」
「申し訳ありませんが申請を無効にできませんか?」
「どうして?この子をソ連が引き取ってくれるのよ」
「ほら、ママが来たぞ」
「さようなら、パパ。いつ遊びに来る?」