しんご

ターミネーターのしんごのレビュー・感想・評価

ターミネーター(1984年製作の映画)
4.0
低予算は作品の質に関係ないことを証明したSF映画の秀作。AIが小説まで書く現代において、人工知能「スカイネット」率いる機械軍によって荒廃した未来というプロットが当時より不気味なリアリティを伴い迫って来ると感じるのは自分だけだろうか。

面白いのはシュワルツェネッガーが当初カイル・リース役でオーディションを受けていたこと。移民ゆえに英語のスキルに乏しく表情も豊かとは言えないシュワルツェネッガーは演技面において相当のハンディを抱えている筈なのに、こと本作に限っては彼の存在がターミネーターのキャラ構築に不可欠な要素となっているのは喜ばしい皮肉である。彼が仮に英語を流暢に話せるオーストリア人だったらこの名作は生まれていなかったと思うし、そこに運命の不思議さとジェームズ・キャメロン監督のキャスティングの妙の勝利を感じる。

骨組みと化してまで標的を追跡する執拗なターミネーターにサラ・コナーのみならず観客も絶望することは間違いない。予算不足により元々はタンクローリー爆発のシーンで物語は幕となる筈だったが、キャメロン監督のアイデアと猛烈な執念がストーリーを強引に牽引。シュワルツェネッガーだけでなく監督ももう1人のターミネーターであったことが本作を名作に押し上げた理由に他ならない。

アクションと並走するキャラクターの成長も見所。運命に翻弄されながら「誰が伝説の女にしてって頼んだのよ!」とカイルに当たり散らすサラはとても反乱軍リーダーのジョンを産んだとは思えないほど弱々しく受け身な大学生だが、この彼女がターミネーターとの戦いの中でどんどんにタフに醸造されていく過程が素晴らしい。プレス機でターミネーターに最後のとどめを刺すシーンで「これで本当に最後よ。」と凄むサラの顔は紛れもなく兵士そのものだった。

世代を越えて語り継がれるべき作品。
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