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男はつらいよ 拝啓 車寅次郎様のKamiyoのレビュー・感想・評価

3.8
1994年 ”男はつらいよ 拝啓 車寅次郎様”第47作

「拝啓車寅次郎様」とは寅さんの甥にあたる満男が
本作のラストで寅さんに宛てた葉書のことを指す。

美しい琵琶湖の風景、寅さんの映画とは思えない
滋賀県長浜市、田舎町の狭い路地、歴史ある家並み
祭りの準備の光景が、日本人の郷愁を誘う。
黒壁スクエアの辺りは本当に絵になる (秀吉の城下町)

ワープロ専用機の全盛期です、OASYSという富士通の
ワープロが会社でも導入されていました
満男はそれに菜穂の文字を何度もそれも4倍角という
大きいポイント数で入力していました
翌年の秋Windows 95が発売されています

靴屋さんに就職後半年の満男(吉岡秀隆)は浮かない顔。
靴のセールスの仕事のやり甲斐や充実感に、疑問を持ち始めている。
営業周りのつらさを愚痴る満男に寅が持ち前の弁舌を披露してみせる。寅が満男に言う「この鉛筆を俺に売ってみろ」というセリフは「ウルフ・オブ・ウォールストリート」でのデ・カプリオのセリフと同じである。
裸一貫で勝負する男の共通性が伺われる。

そんな時、満男は、大学の先輩である川井信夫(山田雅人)から滋賀県長浜の自宅へ遊びに来いとの誘いの葉書が届き、親の勧めもあって、長浜へ旅をする。
川井の自宅というのは、長浜の郵便局町を務める父親
(河原崎長一郎)の持ち家で旧家であった。

満男の川井の妹と出会う最初のシーンがおもしろい。
妹菜穂(牧瀬里穂)の寝顔が満男が部屋を覗いた時の
菜穂の素足が、少しエロチックに感じられ、満男の気持ちが初対面から傾いているのが伝わって来る。
出会いが不審者と思われたからなのか
初めの頃の菜穂ちゃんの不機嫌顔がこれまた・・いい!
かわいい子の不機嫌顔が好きな人にはたまらないかと。
町を案内している時の事務的な口調が
素っ気無さすぎて可笑しかったです。
菜穂に振り回される満男の様子もおかしい。

折から長浜曳山祭りが開催されて、日本三大山車祭りといわれるだけはある巨大な山車が、狭い町をゆったりと動きだす。子ども歌舞伎の行列が練り歩き、やがて山車の上で演じられる。昔からその土地に伝わる祭りは、日本人の原風景であろう。
若い二人は「こども歌舞伎」を鑑賞する。菜緒は自らも演じた経験がある子供の頃を振り返って、「こども歌舞伎」を説明するが、なかなか純粋な表情で好感がもてる。
喧嘩の跡の、急接近する二人の姿に、胸キュンである。
二人の会話的には、気の効いたセリフもなく凡庸だが、
他愛ない会話も、若い男女には楽しいものだ。
何か行動を起こすこともなく
ただホンワリして見ているのが満男くんらしいところ。

菜緒の兄、信夫(山田雅人)は満男と菜緒を結婚させようと画策していたが、その強引さが菜緒の心証を害し
結婚話は頓挫する。牧瀬里穂はここでも
大人の女へと成長していく手前の凛々しい
女の子を演じていい印象を持つ。
「結婚が女のしあわせとは思わない」
菜穂ちゃんがそう口走ります
晩婚化が急速に加速していったのはこの頃

牧瀬里穂は1989年山下達郎のクリスマスイブの歌で
知られる新幹線のテレビCM でブレイクして
「きっと君はこない~♪」の曲に合わせて
牧瀬里穂が現れたらあの頃を懐かしむおじさんとしては
”ヒューヒューだよ”と言いたくなること間違いなしかなと。元ネタが何だったか忘れましたが。
フレッシュさとツンデレぶりが可愛い。
(僕と同じ故郷で福岡出身)
(ミッション系のお嬢さん女子高、憧れる)

寅さんも長浜あたりの琵琶湖岸にアマチュア写真を撮りにきていた鎌倉の主婦、宮典子(かたせ梨乃)との関係は
寅の恋愛というにはあまりに淡いもの。
年に一度撮影旅行に出かけるのを楽しみにしている典子
ほとんどすれ違いに近い。何やら家庭に不満を抱いているような典子の女としての描き方に彫り込みがなく、存在感が薄いところがもったいない。
確かに彼女の登場シーンは美しい琵琶湖の夕暮れをカメラに収めている様子を静かに撮すという印象的なものだ。
聞こえるのはカメラのシャッター音だけであとはシンと静まり返っている。これだけで何となく家庭に恵まれない孤独な女という雰囲気は醸し出されてはいるが。
その後の展開があっさりとしすぎている気がする。
ケガを聞いて典子の夫・幸之助(平泉成)が迎えに駆けつけ、典子は突然帰ることになって終わってしまう。
何も言わず送り出す寅。
寅のことを典子は「風が吹くように現れた」と表現する。寅の旅は風の吹くまま、気の向くまま。

ボルボのステーションワゴンは
当時ちょいとブームの人気車種でした
夫役に平泉成さんなんですが、これがまた不機嫌な
おっさんで、不機嫌役似合うな~と。
というか不機嫌すぎて観ているこちらが
嫌になるくらいの不機嫌さが似合いすぎ。

寅さんは満男に典子の鎌倉に連れて行ってもらう
ただ観るだけ、娘と歩いている典子の幸せそうな様子を見て、「俺の気は済んだ」と言い、彼女に会わずに身を引く
遠くから典子さんの幸せを願ってますみたいな
寅さんの背中に漂う哀愁が堪りませんでした。

別れはいつもの柴又駅ではなく江ノ電鎌倉高校前駅。
でも雰囲気はなぜか似通っている。
満男の甘い恋愛観に釘を指すところが
寅らしいところだったろうか。
あそこはいい駅だ。ひなびてて、目の前には意外と寒々とした海が広がって。あんまり人は多くないし。
あそこで満男は寅さんに説教される。
満男は「恋ってちょっとくたびれる」と言うのだ

寅さんが満男に「燃えるような恋をしろ。」と諭すシーンは遺言とも思える。とても胸が熱くなるシーンだ
『燃えるような恋をしろ』
『大声出して、のたうち回るような』
『恥ずかしくて』
『死んじゃいたいような恋をするんだよ』
このやりとりに熱いものがこみ上げてくる。

ラスト、失恋の後遺症か、正月早々みんなの前で機嫌の
悪い満男、外に出て行くと江戸川のほとりで、振られたと思っていた菜穂とゲンちゃんが話してる、
訪ねて来たのだ!すっかり機嫌が治ってしまい、土手の階段を軽快に駆け降りる満男。その顔には満面の笑みがあったのでした…自分をはるばる訪ねて来たんだ
笑顔がこぼれるシーンが泣けました。
てっきり次作にも登場するのかなと思ったが、
渥美清の病状悪化のせいか、そうはならなかった。
”牧瀬里穂のほうがいいぞ”

もうすぐこのシリーズも終わってしまう
寂しさがありますなあ。

この作品に渥美清が出演するのは医者が止めたらしいが、命がけの出演であり、頭が下がる思いである。
まさに命を削っての出演。
2件
  • しづ

    「いいね!」ありがとうございます。 寅さんの事を想うと 勝手に泣けてしまう(;^_^A 寅さんと満男くんのダブル主演のような映画となりましたね。

  • Kamiyo

    しづさん 寅さんは 泣ける話と笑いとあり もはや定番となった寅さんと満男の2段セット恋愛 今回はどちらも淡く、儚く終わる。 またまた失恋同士となった二人。 寅さん もうあと1作ですね 寂しくなりますよ

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私は映画を知って60年になり はじめは東映時代劇から始まり若大将シリ-ズそれから洋画に芽生えた頃 卒業 ある愛の詩 007シリ-ズ ブル-スリ-(ドラゴンシリ-ズ)古い邦画 洋画が好き そのうち サ…

私は映画を知って60年になり はじめは東映時代劇から始まり若大将シリ-ズそれから洋画に芽生えた頃 卒業 ある愛の詩 007シリ-ズ ブル-スリ-(ドラゴンシリ-ズ)古い邦画 洋画が好き そのうち サスペンス映画ヒチッコック 黒沢明監督シリ-ズをアップしたいと思います 映画本当に大好きです 評価は僕の偏見と好き嫌いが入っています 5.0 最高 4.5 大好き 4.0 いいね。。 3.0-3.9 面白い 3.0以下評価しない