久しぶりだね、寅さん。
気付けばすっかり風格出ちゃってるね、寅さん。
今回の舞台は滋賀県。
『男はつらいよ』シリーズ、第47作目。すっかりここまでやって来た。もう残りも数本だな。
団子屋連中もすっかり妙齢になって名店感も出て来ている。
おいちゃんとタコ社長のやりとりも何だか味わい深い。
満男、ついに就職。靴メーカーの営業。
やっぱりいつの時代も大変だよな、サラリーマンは。
にしても、このよく出てくるおじさん、今回は満男の会社の重役。
「お前、この会社で働くか悩んでるのか。悩むのはいい、若いんだから。真剣に考えた結果辞めるのならそれも良い。でも、仕事はその日の気分で、やるとかやらないとか、そう言うのは困る。ちゃんと考えてみるんだな」
定番だけど、なかなかいうことを言う。
サラリーマンの洗礼を受ける満男。
名刺交換をし、百貨店や小売店を歩き回り、注文を取って納品する。
これにやる気を失う満男に、勝負を持ちかける寅さん。
目の前にある「この“えんぴつ”を俺に売ってみな」。
このシーン、寅さんの極意が詰め込まれててとても暖かくなる。
山田洋次の本意ではないかも知れないが、ここまで観てくると最後のタコ社長の余計な一言も含めてこういうシーンの温もりがたまらない。
そして、90年代の渋谷の人混みに揉まれる満男を見て、個人的にもさらにグッとくる。
まだまだこの頃のスクランブル交差点の道ゆく人が“ほぼ日本人”。30年ぐらいで街も人も、一変しますよ。
そんな都会の喧騒からいっきに田園と琵琶湖の湖畔の風景、そして、かたせ梨乃。
この艶っぽい大人の色気、朝から物憂げに1人で佇んでサンドイッチ頬張る姿から放たられる哀愁と活力、、、絵になる素敵な女性。
時代は絶えず動いている。季節も変わりゆく。そして、その中で人もまた。皆少しずつ歳を重ねる。
サラリーマンとして都会で人の並みに飲まれ、何のために必死になってるのかわからなくなってる満男もいれば。
今日もどこ吹く風と好き勝手に喋り倒してまた団子屋飛び出して地方で物を売りながら油も売って生きてる寅さんもいれば。
一年に一度の旅を楽しむかたせ梨乃。
なんやかんやといつもの義理と人情とロマンスパターン発動。
なんでか、何回観てもこのパターン、全く飽きない。『男はつらいよ』マジック。
そんな満男と寅さん。
滋賀県長浜でパターン発動の寅さん。
琵琶湖近辺に世話になった人に会いにいく満男。
それぞれの道すがら、ではあるが、これもまた、パターン発動。
そして、出てきた。牧瀬里穂。平成のアイドルクイーン。めちゃくちゃ可愛い。信じられない。赤のチェックのワンピース、似合いすぎ。
満男に寝顔をジロジロ見られたことを根に持ち膨れっ面で満男を観光案内。
ツンツンしてるのも、そのあと打ち解けてニコニコしてるのも、何もかもが可愛い。
イライラしながら観光案内してくれる牧瀬里穂とデートとか満男、お前、贅沢すぎるわ。
一方で、かたせ梨乃と琵琶湖の湖畔で夕陽と漁船を見ながら寂しい会話、「本当の夫婦の愛って」。寅さん、あんたも贅沢すぎるわ。
都会の喧騒も、田舎の湖や山々の風景も。
山田洋次、渥美清、『男はつらいよ』にかかればなんと美しく、力強く、生き生きすることか。
松竹ならでは、歌舞伎も。
歌舞伎見てたら寅さん、現る。ここで、現るか。
「いるなら、そいつ勝負すればいいんだよ」
一足先に傷心の寅さん、応援してるのか、不貞腐れてるのか、何なのか。
ここ何作かの寅さんと満男のコンビネーション、ホント、最高だわ。
「結婚の末の幸せの形とは？」のかたせ梨乃。
「結婚が女の幸せの全てとは思わない」の牧瀬里穂。
泉ちゃん、ゴクミはどこ行ったのか、満男、いいのか、と言いたくはなるが、牧瀬里穂はそれを塗り替えてしまいそうな、完全に飛び抜けた魅力がある。
今日も時勢を反映した義理と人情の風が吹く。
いつもその寅さんと満男がどこかで吹かせた風を受け止めるさくらちゃん。
今ふと思う。
この頃は携帯電話も普及もしていない。だから、出先で喧嘩別れしたり、連絡先を聞き忘れたりした時の気持ち。
下手すればもう一生会えない可能性の方が高いこの一期一会の大切さが身に沁みる。
終盤の満男と寅さんのドライブと、駅のホームでの別れ。
この成長があるようなないような男2人の会話。
寂しい男2人がお互いに背中を叩き合って慰め合って励まし合うような一言一言。
なんだか、、、なんだか泣けるよ、俺は。
なぁ、寅さん。
※24年3月、映画オススメブログ、始めました。
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作品単発のレビューはここでやっているので、こちらは企画記事メインに挑戦したいと思います。
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（まだ始めたばかりでお粗末が過ぎるブログですが）
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