ベビーパウダー山崎

ワン・フロム・ザ・ハートのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

ワン・フロム・ザ・ハート(1982年製作の映画)
3.5
やはりというか、あれだけ愛想をつかして出ていったのにどうしてもクズな男のもとに帰ってきてしまうのがコッポラの表現。ギラギラギトギトと発売禁止になった合成着色料のような色合いで彩られた全編セットでの歌い躍りの物語は(悪)夢のなかに迷い込んでしまった的なグロテスクさがある。
髪の色を染めたハリー・ディーン・スタントンのまがい物な存在が歪な世界を更に強くする。ナタキンのサーカスな見せ物はケネス・アンガー風。身体を大げさに使ったサイレント時代の喜劇みたいなドタバタも結構していて笑えたりもする。
己の表現にのめり込みとんでもない金かけて破産して、それでも出来上がった素晴らしい作品は半永久的にこの世に残る。コッポラやりきったな。いま見ても充分刺さるよ。コッポラ、あのときの思いは間違いではなかったと強く抱きしめてやるからションベン横丁に飲みに行こうや。