Jaya

人生のお荷物のJayaのネタバレレビュー・内容・結末

人生のお荷物(1935年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

還暦間近にして3番目の娘を嫁に出した省三は恥かきっ子の末の長男貫一に辟易するけどやっぱり可愛くてしょうがねえというお話。百人一首の謡(?)は当時の典型的な余技なのだろうか?

戦前の風俗の一部がよく伝わってきて楽しいです。結婚式の様子であったり、キャフェーからのお座敷遊びだったり。富裕層には違いないと思いますが、そこかしこにみてとれる現在との相似形。

次女逸子こと田中絹代の現代感にぶっちぎりの存在感。貫一も絶妙に出来損ない呼ばわりされそうな。仲人の息子の抜けた感じに笑ってしまいました。

野暮ったさと素朴の合間を行くような構図とカメラワークが堪らない。呆気にとられる程に舞台がかったカットと洗練されているようなカットが入り混じる。

なるほど何十年も子育てしていれば愚痴っぽくもなるのかもしれない。父と母の対比が素晴らしく、聞こえていない筈がない貫一。その無邪気さに助けられたと言って良い省三。家族の描写のリアリティが味わい深い。

どこまでも凡庸な話の筈ながら、絶妙かつ奇妙な演出で親子の普遍的でリアルな様相が描き出された名作でした。
Jaya

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