佐藤克巳

人生のお荷物の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

人生のお荷物(1935年製作の映画)
5.0
五所平之助監督の男親の本音を吐露した蒲田調ホームドラマの異色作で、直接的には父斎藤達雄と母吉川満子の晩年に生まれた長男葉山正雄をお荷物としているが、現代においては子供を出産、養育する事自体がリスクとする風潮を考慮すれば、長女坪内美子、次女田中絹代、三女水島光代だってお荷物だった。斎藤は、高齢になってやっと3人を嫁に出し一息ついたら、すやすやと眠る息子の存在を疎ましく思う心情は理解できる。またそれを不憫に思い別居する吉川は、息子を可愛いと可哀想をごっちゃにしているとした上で、自分こそ犠牲者だとまで吐露する辛辣さは鋭い視点だ。だが、それでいて最後はハッピーエンドになる鮮やかさが心地よく、五所・渋谷から川島・中平へ流れる系譜に愛着する私は本作の業績を最大限称賛したい。
佐藤克巳

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