いの

FLIRT/フラートのいののレビュー・感想・評価

FLIRT/フラート(1995年製作の映画)
3.3
ハル・ハートリー観るの4作品目。そのなかで今作がいちばんわからなかった。会話に出てくる人物名が多くて誰が誰だか。ニューヨーク(1993)、ベルリン(1994)、東京(1995)。同じテーマの話を少しずつ変調させて進んでいく。フラート(浮気者)の懲りない方々。


入れ子構造というのでしょうか。ベルリン篇に出てくる作業員3名がご丁寧にも制作の意図らしきものを語ってくれます。

作業員A「もし監督の言葉を信じるなら、同じ状況が異なった場所で展開する際に変化する活力の比較こそがこの映画だ」

作業員B「その試みは成功するのかね?」

作業員C「(略)失敗すると思う」

作業員AかB「でもこの失敗は興味深いよ」


なーんだ、監督は失敗するだろうと思ってるのかもしれないし、すでにその失敗を撮りながらも楽しんじゃっているのか。この実験と経験はどこかで必ず生きてくるものね。この作業員3名の会話は、今作をコメディだとわたしが受け取った瞬間でもありました。


ハルハートリー観ていて、どれも舞台劇の延長線上にあるという気持ちを私は強くしている。ハートリー劇場での今回の公演は、座付き役者に加えて客演が多い。観客は毎回楽しみに劇場に来てくれているし、今回の公演が好評だとしても不評だとしてもきっと自分たちの新たな試みを信じてまた足を運んでくれるだろう。制作サイドが観客を信頼しているからこそ成り立っている映画という気がしないでもない。同じところに居続けることをしないで挑戦したいという気持ちは尊い。


ベルリン篇での数々の鮮やかなレモン色(作業員のヘルメットまで!)の、その色味は憶えていたい。そしてハル・ハートリーと二階堂さんが肩を寄せ合って座っているとなにかとても貴重な場面に遭遇した(いいもんをみさせてもらった)と思ってしまう
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