GreenT

BubbleのGreenTのレビュー・感想・評価

Bubble(2005年製作の映画)
3.5
なんだコレ、めちゃ面白い!

オープニングはショベル機がお墓を掘るところから始まる。なんだかやたらアップビートな、アコギのジャンジャカ音楽。パケ写の「奇妙なアート映画」風と違って、「心暖まるインディ・コメディ」って感じだ。

主人公のマーサは、40−50歳くらいの太った女性。赤毛で、小さい時は「赤毛のアン」みたいな可愛い女の子だったんだろうなあって思わせる。年老いた父親の世話をしてから、若い20代の同僚のカイルを迎えに行き、カイルとドーナツ屋で朝食を取り、人形を作る工場へ向かう。

この人形作りが、なかなかに衝撃。いわゆる赤ちゃん人形なんだけど、目を入れたり、唇の色を赤にスプレーペイントしたりするのが気味悪い。カイルは型にプラスチックを注入して焼くんだけど、出来上がってから「すっぽん!すっぽん!」と型から抜くと、足だったりとか。

マーサとカイルはランチも一緒に食べる。カイルは、この仕事のあともう一つ仕事があるので、そっちの工場に車で乗せてってくれないかマーサに頼むと、マーサは「もちろんよ!なんでも言って」とか言う。

で、また工場で仕事し、マーサはカイルを送って次の工場へ行くのだが、この工場はショベルを作っていて、そこでカイルは木くずや鉄くずを廃棄する仕事をし、帰りは別の同僚に送ってもらって家に帰る。

マーサは副業としてペットの洋服づくりをしていて、お父さんがTV見ている横でカタカタ縫っている。

このカイルとマーサが、すっごいリアルで、本当にこういう人いるよな〜っていうのもそうだし、会話がすっごくリアルで、「良くこんな役者さん見つけて来たなあ」って思ったら、全部地元に住んでいいる素人さんらしい。

この映画は「すっごい退屈!」って言う人も多いんだけど、ジュリア・ガーナー主演の『The Assistant』という映画を思い出した。あれも、無感動、無関心にならないととても続けられないような仕事を淡々とやるシーンがずーーーーと続く。こちらも、工場の無機質さ、そこの単調な仕事のつまらなさ、それを続けるには感情が劣化していくような淀んだ感じを表現していて、私は退屈どころかビンビン来た。

なのに場面と場面の間に、最初に言及したやたらアップビートな感じのジャンジャカ・アコギ音楽が挿入されて、そのうち「なんなのこの音楽!」って笑ってしまった。

人形工場は出荷が増えて人手が足りないと言っているくらいなのに(5人くらいしかいない)、マーサやカイルは生活に困って何個も仕事を掛け持ちしているっていうのも、アメリカっぽいなあって思う。

で、新しく雇われたシングル・マザーのローズはカイルと年が近く、マーサとカイルのランチに合流するようになる。カイルとローズが仲良くなるのを、ザワザワしながら見ているマーサ。たった一週間で、カイルはローズをデートに誘い、ローズはそれを知らないマーサにベビーシッターを頼む。ローズを迎えに来たカイルを見たときのマーサが痛々しい。

このローズも素人なんだけど、ダメンズ彼氏とケンカしているところなんか、私の友達にソックリ(笑)!あのダメンズ彼氏も多分素人なんだと思うと本当にソダーバーグ監督は役者のディレクションが上手いんだなと思う。

事件が起こってから出てくる刑事も本当にすごい。普通の映画の刑事と全然違くて、多分、こっちの方がリアルな刑事だなと思う。

ソダーバーグ監督のインタビューも見たけど、工場で単調な仕事をしている人たちの人間関係を描く、のような骨組みだけあって、実際のロケ地を見つけてから、その土地で出演者を探し、その出演者のプライベートな話を脚本に盛り込んで、セリフは基本的な流れがあるだけであとはアドリブだったらしい。なるほど〜。だからあのリアル感なのか。

なんかこの「大筋だけあってあとはロケ地の素人を出演させる」のは、6本くらいシリーズもので撮った、もしくは撮る、とインタビューで言ってたけど、他の5本はなんなのか、調べたけどわからない。知っている人がいたら教えてください。


この先はネタバレになってしまうので、コメント欄で!
GreenT

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