恋人もいない。仕事もない。貯金もない。そんな30代の女性ヒス。 1年前に別れた男ビョンウンに貸している350万ウォンを返済してもらうため、ビョンウンのいる競馬場に向かう。
競馬場で二人は再会する。しかし、ビョンウンにはヒスにすぐに返せるお金もなく、それどころか全く悪びれる様子もなく、ヒスとの再会を喜ぶ始末。相変わらず、能天気な甲斐性なしのダメ男っぷりである。
ビョンウンはすぐに借金をきちんと返すと約束するが、当然ヒスは信用出来るはずもなく、結局、ヒスに借金を返済するためのビョンウンの新たな借金行脚の1日に付き添うこととなる。
地味な映画だけど、わたしはすごく好き。二人の間に流れる居心地の悪い窮屈な空気感、距離感が不思議なのだがなんとも心地いい。明らかに、ビョンウンは甲斐性なしのダメ男なのに、何故だか憎めない。実際、彼にお金を借す人間達には、彼を悪く言うものはいない。再会したばかりのヒスの表情はとげとげしく、穏やかなものではなかったけど、借金行脚を一緒にすることで、自分の知らなかったビョンウンの交友関係を知ることで、大切なものを垣間見る。このまま行くとラブストーリーに発展して行っちゃうんじゃないのというような微妙な空気感が後半に入り流れ始めるのだが、そこに落とし込まなかったのが好印象。そして最期には、とげとげしかったヒスの表情は優しい笑顔を取り戻していた。なんとも心地の良い余韻を残して二人の一日は終わる。人と人との繋がりや、自分の可能性を信じて挑戦し続けることの大切さ、そんなことを語りかけてくるような作品だった。主演の二人の演技力に拍手を贈りたい。
