“終わりの始まり”
ジョン・ウォーターズ先生はその年のベストワンに選出し、フィリップ・ガレルやペドロ・コスタ等も心酔したガス・ヴァン・サントの2005年の作品。
ここ最近『永遠の僕たち』『サイコ』『パラノイドパーク』と見逃しがちだったガス・ヴァン・サント作品を観てきたが、私的には本作に最も心を掴まれた。
こうなれば“死の三部作”の1作目『gerry ジェリー』も観るしかない。
前作『エレファント』でも長回しへの強い固執っぷりが垣間見られたが、それも本作でついに完成形を見た感がある。最近観たフー・ボー監督の『象は静かに座っている』なんかに通ずるものも感じたが、やはりサントはこの映画を絶賛していた。
フィルマでは端的に“つまらない”と酷評も多く目立つ本作、気持ちはわからなくはないのだが、決して本作は暗い退屈な見所のない映画ではない。
たしかにニルヴァーナのカート・コバーンをモデルに、死ぬ前の最期の2日間を描くとなれば、どう考えてもいわゆるハッピーエンドにはならないわけだが、本作は全編どこか牧歌的でもあり、本作で描かれる死はある種の呪縛からの解放のようなものに思える(自殺推奨をしているわけではない)。
“ここ2年での俺の好きなアルバムは…”と如何にもカートが言いそうなボソボソ一人言をフラフラになりながら発し、カートが憑依したかのような名演のマイケル・ピット。実にチャーミングだ。
観た次の日にまた再鑑賞したが、どんどん静かに静かに私の心を侵食していく。そんな映画。