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秋津温泉のwisteriaのレビュー・感想・評価

秋津温泉(1962年製作の映画)
4.4
司馬遼太郎原作の新作映画『燃えよ剣』が岡山で撮影しているらしいということで、ふと、岡山県民として、岡山に縁のある映画を気が向いたときにレビューしていきたいなと思いたち、まず一本目には岡田茉莉子主演、吉田喜重監督の『秋津温泉』を。

タイトルは秋津となっていますが、これは岡山の県北にある奥津温泉のこと。映画でも写されていますが、渓谷に沿った四季折々の景観が実に美しく、鄙びた温泉宿も雰囲気あって、行けば最高の聖地巡礼になるはず!

話は、藤原審爾の原作小説に基づいており、長門裕之演じるどうしようもないだめんずに嵌って命懸けで尽くしてしまう美しき温泉若女将の悲恋を温泉宿の盛衰に重ねて描く、といった感じのベタベタの日本文学メロドラマ。現代的価値観からは、そうはならんやろ、という展開もけっこうあるんですが、側からは信じられないクズ男にはまる女性というのは、現代でも普通にいるので、この設定には胸糞感は否めないもののある程度普遍性はあると思います。

こてこてのメロドラマとは言ってもそこは吉田喜重監督、ここ、本当に岡山なの?と思わせる、長回しを基調としたパリッとした引きの構図にはっとさせられます。切り立つ岩場、橋、鏡、ガラス窓、雪道を走る岡田茉莉子、美しいうなじ、くどいほどに盛り上げる林光の音楽、若き日の吉田監督の才気が迸っています!

一番の見所はなんといっても、自らキャリア100本目の企画として持ち込んだという岡田茉莉子の渾身の演技ですね!天真爛漫な17歳の少女から影のある妖艶な34歳の女性までを魅力的に演じきっています。この岡田茉莉子とこの作品をきっかけに結婚までした吉田喜重監督、マジで羨ましい。。

よく言われることですが、それにしてもこのころの長門裕之はほんと桑田佳祐にしか見えない(笑)似てるとかいうレベルじゃないです。。

英題は"Akitsu springs"。
springには泉という意味があり、この英題では温泉に当てている。温泉自体には普通hot springsという表現がよく使われる。
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