あなぐらむ

月曜日のユカのあなぐらむのレビュー・感想・評価

月曜日のユカ(1964年製作の映画)
4.4
全ての構図が完成された恐るべき中平康監督作。
加賀まりこの美しさ可愛さはまさに「死ぬほどいい女」。港横浜を舞台に、愛を与え、愛を探す女を大胆な演出で描き出す伝説的名品。

この奔放な演出は何だ。この計算され尽くしたカットは何だ。女優を「撮る」という事の映画的な、あまりに映画的な結論。女優を目指すなら、この監督からの挑戦状に自分がどう答えるか、加賀まりこの、踊るかのような芝居ぶりを見て、考えて欲しい。

中平が「混血児リカ」を撮った感覚は、何となく本作を見ると掴めた。彼の中では一貫している女性像があるんだと思う。
戦後、昭和の映画では「妾の子」「混血児」の設定が結構多いのに気づく。自ら戦後を生きる責任はチャラにして生きるパパ世代に対する、決して日曜に「パパ」に会ってもらえない愛人・ユカの復讐までのふらふらとした道のりが本作なのだ。

パパこと加藤武は当時35歳(!)驚きのパパぶりである。横浜の名所はひと通り見る事ができる観光映画として、極めて日活映画らしい作品でもある。倉本總の生硬な脚本も、今では味わい深い。中尾彬サンもまだぎらぎらしていて良い。

中平の遺伝子は多分、田中登とかにも継承されてると思う。「月曜日のユカ」単体で見ると突出してるように見えるけれど、「狂った果実」から「おんなの渦と淵と流れ」や「結婚相談」などと見ていくと中平の女性観みたいなものが俯瞰できるように思う。
中平の助監督として多くついた西村昭五郎は、日活ロマンポルノのリーダー監督として、時に中平のような味わいでもって女性を描いて行った。

横浜・象の鼻テラス「海辺の映画会 Vol.1」として企画を出して採用され上映となったのは2019年。昭和のモノクロ映画、という事で多くのお客様に来て頂けて、その後の定期開催のきっかけにもなったありがたい作品です。
2023年8月には、ロケ地でもあるホテルニューグランドでも上映する事ができた。ありがたい。