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美女と野獣のhasseのレビュー・感想・評価

美女と野獣(1946年製作の映画)
3.6
これまで6回ほど映画化されている人気の童話『美女と野獣』の、コクトー監督版。

豪華なセットや衣装、小道具に加え、当時基準では奇抜な特殊効果が目を引く。野獣の屋敷の腕の燭台は、最初観たときはオォ…と謎の感動を覚えたが、裏側に何人もの男たちが突っ立ってるんだなとか考えたらダメだった。

主人公は、野獣を哀れみこそすれ求婚を承諾しないのに、野獣の呪いが解けてイケメン王子になった途端に結婚するわ、というのは虫が良すぎる偽善者もいいところ。主人公の視点でルッキズムへのアンチテーゼを提示しておきながら最後はルッキズムそのもので終るというひどい結末。

しかしそんなストーリーなどどうでもよくて、主人公がローブの裾をはためかせながら館に闖入するスローモーションのシーンが凄まじく優美、流麗だ。ローブやカーテンが柔らかい光を受けてひらひらとはためきつつ、主人公が館の奥へ奥へといざなわれていく様子を収めた画面全体が、凄艶な色気を帯びている。
『ズヴェニゴーラ』冒頭シーンを越える、映画史に残るスローモーション名シーンかもしれない。

コクトーは初めてだったが、こういう耽美性が評価されてるということなので、他作品もチェックしてみたい。
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