湯っ子

籠の中の乙女の湯っ子のネタバレレビュー・内容・結末

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

この家族は、人間の形をしているけど、人間と思えない。
かろうじて、家屋に住み、車に乗って通勤し、家族の形態を持ち、服を着てテーブルで食事をするけれど、私たちが人間社会の中で認識している表情、概念、常識がこの家族にはない。
その中で、言葉は私たちの使っているものと、彼ら固有のもの、その狭間にあるようだ。

そして、この子供たちには名前がない。躾をするために、離れて暮らす犬には名前がある。
名前は、言葉を使って個をあらわすもの。
だから、名前があるかないか、ということは、この物語の中で、大きな意味を持つと思われる。

最初、子供たちは本当は犬なのかなと思った。
それからママも犬。娘①が逃げ出した時、パパ以外は四つん這いになってワンワン吠えていた。
パパが彼らを犬みたいにペットにして飼っているのかと思った。
だけど、よそに預けている犬に名前があって、
子供たち(おそらくママも)に名前がない。
名前のある犬の方が主で人間が従なんじゃないか。
パパは犬なんじゃないか。
犬が人間を飼っている話なんだ、これは。
だから原題が「犬歯」で、犬歯もまた、犬と人間を分けるものなのかな。
その犬歯を無理矢理抜いて、娘①はあの家を飛び出す。
パパの言いつけ通り、律儀に犬歯を抜いてから出ていく娘。パパは外へ出るには車に乗って行くと言っていた。
だけど、犬に飼われていた娘は犬として育てられた知識しかなくて、車の運転なんか知らない。とりあえず開けてみたところは、私の身体の大きさにちょうどいいな。ここへ入れば外へ行けるんだ。

娘はトランクを閉めたら中から開けられないなんて知らないよね。かわいそうで胸が痛む。

自分でも何を言ってるかわからなくなってきました…

なんだか観たことない世界、予測のつかない映画が観たくて、噂のこの映画を観てみた。
観ている間は、明るい光に包まれた狂気を眺めながら、へぇ〜…と、割とシラけてしまい、何度か寝落ちした。
でも、娘①がクリスティーナから借りたビデオの影響でロッキーの真似をしたり、結婚記念日の変なダンスだけでもおかしいのに、突如フラッシュダンスを踊り始めるところは爆笑してしまい、まあこんな面白いもの見られたからいっか〜、って思った。
そのあとはいきなり怒涛の展開で、一気に引き込まれ、そして放り出された。

なんじゃこりゃ???
観た後色々考えて、そのことのほうが面白かった。
というわけで、私の結論は、人間が犬に飼われたらこんな風になるよ、という映画だと思いました(人間は社会の中で人間たりうる、とかいう結論に持っていくとなんかシラける)。
好きか嫌いか聞かれたら、あんまり好きじゃない。笑
でも、観たことない世界を観たいという期待に応えてくれたことと、少し考えることができたことと、面白いダンスが見られたから、この評価にします。
湯っ子

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