ゆきの

籠の中の乙女のゆきののレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
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『健全な家庭に、狂気は宿る』


生まれて初めて属する社会集団である家族。
そのリーダーを務めるのは親であり、彼等が法律なのはどこの家庭もそうだろう。
しかし、この法律(教育上のルール)は子供にとってどれほどの心理的影響を及ぼすのか。

子供を亡くした過去故に(あまり多くは語られていないが)、子供を守る という愛情が歪んだ形で子供達を支配してゆく。
家の塀を超えることもなく、白い肌着だけで無邪気に遊ぶ大きな子供たちはまさにイノセント。
嘘に嘘を塗り重ね、外の世界への恐怖心を植え付け、犬のように躾る父親の姿は、人間のエゴの塊のよう。
そして黙って従う母親が一番恐ろしい。彼女が何を考えているのか、何も伝わってこないのがゾクッとする怖さなのです。

『ロブスター』の監督の過去作品ですが、
これでもかと言わんばかりの性描写はキツかった。官能的でもなければエロでもない。シュールさによって人の体が無機質に感じられてしまう恐ろしさ。
そして、イノセントな彼等が「自分が今何をしているのか」を本当に理解しているのか、も分からない。
そしてその無知故に、ラストの解釈も絶望的に映ってしまう。

健全な家庭、とは誰が下す評価なのか。
家族という社会集団ほど中の見えない集団はない。それは時として恐ろしさを生み出す場所でもある、ということ。

『ロブスター』があまりにもツボだったので監督の過去作品を鑑賞してみたら、
あらまあこれはミヒャエル・ハネケが引き合いに出されるのもやむなし、と思うような作品でした(°_°)
ただやっぱり終始シュールで、ラストの場面は『ロブスター』と似てました。
そして、ジメジメとした人間の黒い部分をこれでもかと見せつける映画に耐性が出てきたので、ハネケ作品や、ラース監督の鬱三部作も行けるんじゃないかと思いますが、この作品のパンチもなかなか重たかった〜〜。そんなのへっちゃらでぃ!って方は是非どうぞ…オススメは、しませんヨ!
ゆきの

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