TOT

籠の中の乙女のTOTのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
3.9
『ロブスター』もだが、こちらも笑えばいいのか怖がればいいのか感情が混線する。
『ロブスター』が愛と婚姻について物語る試みなら、こちらは家族という国家と洗脳について物語る試み。

外界を遮断し高い壁で囲んだ家で、マッドな両親からの教育を受けて育つ3兄妹。
“電話”は塩、“海”はソファ、“ゾンビ”は黄色い花。
言葉すら違う意味を教えられ、行動を規定され、大人の容姿にも関わらず言動は子供のままの異様。

明るい陽射しの下の透明感ある映像は美しく、一定の距離を保つカメラや何かを隠すような構図。
盛り上げない音楽によって不穏な空気のまま物語は進むが、外界からの来訪者との接触によって変質が起こる。

長女役のアンゲリキ・パプーリァ(『ロブスター』では心のない女役)の演技が素晴らしく、ロッキーやフラッシュダンスを真似る様は鬼気迫る迫力。

ひきながら笑ってしまう。
シュールだけれどもたまにハッとする熱さもある。
不思議な魅力ある作品。
TOT

TOT