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籠の中の乙女のbennoのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
4.0
ヨルゴス・ランティモス監督作品…
       7作品目…。

同監督の作品『ロブスター』と同じように、何者かによって定められたルールの中で暮らす箱庭世界の虚構と現実…。

恐怖の独裁者によって作られた籠の中で安全に暮らすのか…それとも危険を承知で外の世界に飛び出すのか…??

兎に角ヨルゴスさんの作品は設定が突飛…奇妙奇天烈、不気味で悪趣味…全く以ってあり得ない話と思いきや…妙にリアリティを感じる切迫感が堪らなく薄気味悪いのですが…魅力的…!!



ギリシャ郊外にある豪邸に住む両親と3人の子供たち…長男とふたりの姉妹…見るからに3人とも成人しています…。

一見すると裕福で満ち足りてそうな家族…。

しかし、広い敷地に高い塀…子供たちは無菌環境下で純粋培養され、一歩たりとも外の世界に出たことがありません…身体は大人なのに、精神はピュアで幼い子供…ご褒美で貰えるシールを楽しみにしています…。

そして子供たちに名前はありません…まるで人格が無いかのよう…。

また、父親は至って真剣に子供たちを外界から守ろうと「外の世界は恐ろしいところ」と言い聞かせ、一風変わったルールを定めます…学校に通わない子供たちには意味を変えられた単語を教え込みます…彼らにとって"ゾンビ"とは黄色の小さな花…。

ただ、子供の為と言いながら親が自分のエゴイズムを振り翳しているだけ…不気味を通り越して滑稽で笑えます…。

音楽は少ないですが父親が子供たちに《祖父の歌》と嘘をついて聴かせるレコードがフランク・シナトラの♪Fly me to the Moon…勿論、恋愛の歌なのですが、父親の見事な誤訳で"親が子供を思う歌"にチェンジ… ꒰笑꒱

子供達のダンスシーンもめちゃ笑えます…(❤︎Ꙭ)んっ?? フラッシュダンスにロッキー…??

また、主人の命令に従わない気まぐれな猫は、この世の最恐動物とインプットさせ、子供たちは犬のように従順に調教されます…猫好きの方は要注意のシーンが有ります…ს

原題でもある『Dogtooth』(犬歯)…父親の決めたルールの中に『犬歯が抜けたら、家から出て行っていい』…そこで長女は自ら鉄アレイで……痛いっ!!

大なり小なり…どの家庭にもそれぞれにルールがあり、ごく当たり前のロジックが当たり前では無いやり方で歪められた時…ある種、人間の文明論のよう…我々にも全く関係のない世界では無いような気持ちにさせられてしまいます…。

そして知らないことの恐怖…ヨルゴスさん、怖い!!
…でもそこが面白い…。

ハネケ然り…やっぱり私、変態監督好きみたい〰︎おっと!! 失言( ・×・)オクチチャック…ෆ*
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