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籠の中の乙女のchiのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
3.8
「哀れなるものたち」のヨルゴス・ランティモス監督の過去作を鑑賞。
今作もとんでもない設定で序盤は何じゃこりゃと思いさすがにこれは気持ち悪いなと思いながら見ていたが、途中から話の意味がわかってきて本作が描いているテーマが見えてくる。終盤の犬歯のシーンではなるほどと唸る。

外の世界から隔離して家から娘たちを外に出さずに自分たちの教えのみを聞かせる。これは昨年見た「悪い子バビー」を思い出す設定で、本作は悪い子バビーの前半部分と重なる。家から出さないから家庭の中で性欲を発散させるから近親相姦するし。本作で特に上手いと思ったのが、言葉の意味さえも自分たちの都合の良いように意味を変えて教えていたこと。最初のシーンの「海」や「遠足」がどういうシーンだったのか、最初は何を言っているのかわからなかったけど途中でわかってぞっとした。家の中に存在しない海や遠足は都合悪いから本当の意味を教えず偽の意味を教える。犬歯もそう。もう大人になって生え変わるはずがないのに、生え変わったら運転ができる、外に出られると教えることで、ずっと家の中に閉じ込めておく。洗脳ですね。

まあちょっと理解不能だったり気持ち悪すぎるシーンも多くて受け入れ難い部分はあるけど、ヨルゴス監督3作目でこの監督のテーマ性のようなものが見えてきて好きになってきた。家父長制的支配とそこから抜け出す女性といったところでしょうか。
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