カポERROR

籠の中の乙女のカポERRORのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
3.8
☠検証☠
【人間は7時間33分ノンストップで、ヨルゴス・ランティモスの精神攻撃を受け続けられるのか?/その①『籠の中の乙女』】

✤✤✤

現在絶賛公開中の『哀れなるものたち』で、今年のオスカー最有力との呼び声も高いギリシャの村西とおることヨルゴス・ランティモス監督。
彼は真の天才なのか?
それとも奇人?変人?おっぱい星人?
『哀れなるものたち』の予習を兼ねて、一癖も二癖もある彼の過去作をノンストップで連続視聴することで、彼の正体に迫りたいと思う。
無論、挑戦中はトイレのみ可とし、食事も携帯もお預けだ。
いざ尋常に、勝負!

✤✤✤

さて、一本目の『籠の中の乙女』なのだが…いきなり先鋒にしてこの桁外れの破壊力…もう勘弁してくれ。
初戦から確実に私を殺りにきているではないか。

まず、クリストス・ステルギオグル演じる主人公一家のサイコな父ちゃんが、AV男優の佐川銀次にしか見えない。(何ならファーストネームもエチエチワードに見えてしまうこの不思議w)
パンツ一丁でソファーにもたれ掛かるシーンから、ベッドで激しく腰を振るシーンに至るまで、その一挙手一投足がレジェンドオヤジAV男優 佐川銀次そのものなのである。
まさかこんな角度で感情移入させられるとは思わなんだが、彼(クリちゃん)の奇行はそんなレベルでは留まらない。
彼がVHSのビデオテープをガムテで自身の右手に括り付け、競泳水着姿の娘の脳天を手加減なしでぶっ叩くシーン…私は演技を超越した真の狂気を感じ、全身トリハダが立った。
更に彼は後のシーンで、息子専用”喜び組”要員として雇っていたおねえちゃんの後頭部を、ビデオデッキで叩き割るという暴挙をやってのける。
アノォ…コノカタ、オクスリヤッテマセンカ?(;´༎ຶ۝༎ຶ`)

濃いメンツは彼だけではない。
熟女フリークの私を唸らせたのは、スイスが生んだヴィーナス(?)こと、一家の母ちゃん役、ミシェル・ヴァレイ。
前述の佐川銀次似のクリちゃん(父ちゃん)との濡場では、残念ながら肌色の極大ボカシでその団地妻の如き熟れた肢体は隠されてしまったものの、その後のシーンではたわわな胸もあらわにして体当たりの演技を見せている。(そんなカット誰も注視してはいまい。)

そしてそして、本作の肝である長女役、アンゲリキ・パプーリァ!
その人外の怪演よ。
映画『ロッキー』のオマージュシーンでは、もはや大川隆法がイタコ芸でスタローンの守護霊召喚させたかのように完璧にバルボアが憑依していた。
更に、クライマックスのあの謎ダンス。
妹、置いてけぼり( ゚∀゚)・∵ブハッ!!
M3GANも裸足で逃げ出しそうなその狂気の舞は、当分夢に出てきそうで恐ろしい。
その直後、鉄アレイで自分の右上顎をぶん殴って犬歯をぶち折る鬼の所業…彼女のサイコっぷりはまさしく父ちゃんのDNAここにありである。
そんな万人の脳裏に焼き付く怪演を披露した長女役のアンゲリキ・パプーリァは、同監督作『アルプス』『ロブスター』にも出演しているので、気付かなかったそこの貴方は今一度チェック頂きたい。

ちなみに、本作の原題は『dogtooth』。
まんま犬歯!
一家のルールに従い、自らの犬歯をぶっこ抜いて外界に飛び出した長女は、果たしてベンツのトランクの中でどうなったのか…。
何かありそうで何もないラストの素晴らしい長回し。
ブラボー!
私的にはかなり好みのラストだった。

なるほど。
ヨルゴス・ランティモス…彼は、「この上なく斬新な設定を仕立て、その中で登場する人々の闇深い深層心理を、エロとバイオレンスで煮詰めて熟成させ、それを鮮やかな色彩のソースと繊細な飾り付けで仕上げ、鑑賞者に提供する」という手法にこだわりを持っているようだ。
事実、その後に観た彼の作品全てに、その信条を感じ取れた。
細かな伏線回収や、どんでん返しがある訳ではない。
だが、画角に映し出される情景や空気感は終始不穏で、不思議なことに鑑賞者はその世界から目をそらすことが出来ない。
良くも悪くも、惹きつける力が尋常ではないのである。
この力そのものが、このレビューのテーマに掲げた”精神攻撃”とも言えるのではなかろうか。
そう、見始めたら最後、全ては彼の掌の上で、マインドコントロールの餌食になるのだ。
天才?鬼才?…いやいや、彼はそんな可愛らしい存在ではない。
神か…悪魔か…。
いずれにせよ、かなりスケベな奴だ。
私は…正直仲良くなれそうである。

一本目にして我がHPは70/100に削られた。
続きは二本目『ロブスター』のレビューにて。
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