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籠の中の乙女のBUSSANのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
4.4
次女「ねえ みんなで 我慢するゲームしない?」

次女「こういうのよ 蛇口から熱湯を出して…その中に指を入れる」

次女「最後までどけなかった人の勝ち」

次女「どう?」

………。

長女「面白そう」

次女「どう?」

長男「賛成」






うおおおおおおお!!
最高に狂ってるぜええええ!!!


冒頭の僅か3分の会話でこのレベル。
本作を一言で表すと "狂気の沙汰"。

ジャンルでいうと、スリラーコメディなんかな。

比較するのはナンセンスかも知れませんが、同じスリラーにカテゴライズされている点では、今話題の『ミッドサマー』よりもプロットがしっかりしてて魅力的ですし、圧倒的に不気味で歪んでて面白かった。

笑いと恐怖の割合が絶妙なんよ。
ちょっと気抜いたら、どつかれます。

『ロブスター』(2015)でその独創的な世界に魅了されて以来、ヨルゴス・ランティモスの虜になりました。『聖なる鹿殺し』(2017)と『女王陛下のお気に入り』(2018)と立て続けに劇場で足を運びましたが、年々 "大衆受け"を意識しているようで、僕はあの歪で狂った世界観が好きなんで、ちょっと寂しい気持ちを感じてました。

さて本作はそんなランティモス監督が、『ロブスター』よりも前に撮った2009年の作品です。

フィルマークスの平均スコアが物語っていますが、大衆受けする順は

『女王陛下のお気に入り』>『聖なる鹿殺し』>『ロブスター』>『籠の中の乙女』

それをひっくり返したのが、"歪んでる順"です。

どれも未見の人は手始めに『女王陛下のお気に入り』から、だんだん慣らしても良いかも知れませんね。

残念ながら、この手の映画に耐性が全くない人は本作はおススメできません。無理な人は全く受け付けないと思います。その気持ちも十分理解出来ますが、僕は大好きです(笑)

監督の知性とユーモアが感じられる作品です。
説明過多じゃないのも高評価。

BGMなしの固定されたカメラワークが、より一層不穏な雰囲気を引き立てて良いですな。

ペドロ・アルモドバル監督の『私が、生きる肌』が好きな人は気にいると思います。

本作はあらすじや、ネタバレを見ない方が確実に楽しめると思います。未見の人にはネタバレをしたくないので、このへんで失礼しやす。


以下、ネタバレありの感想








↓↓↓















いやー!究極の "箱入り娘"でした!!

愛情もあそこまでなると恐ろしいでんな!

あの腹の出たオッサンが怖い怖い。
ビデオテープ、ビデオデッキでどつくシーンが強烈で、鮮明。

犬歯のくだりとかね、徐々に嫌な予感を臭わせるのがホンマに絶妙。その予感が現実になる瞬間は、何とも表現し難い気持ちになりました。

長女が映画を見て、覚醒していく姿は微笑ましい。『ロッキー』、『ジョーズ』、そして本作のハイライトである『フラッシュダンス』。

ブルースとただ呼ばせるだけやのに、この家庭にとって "名前" は特別。悲しくも微笑ましい。

『フラッシュダンス』を踊るシーンは初めは笑えるんやけど、最後は笑えん(笑)

ラストのカットもお見事!

それにしても邦題がまた要らんことしてますね、原題『DOGTOOTH』、犬歯です。育ててたのは人間か、はたまた従順な犬か。

家の敷地からはみ出さずに綺麗に整列して吠える姿を見れば、言わずとも分かりますね。
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