すず

籠の中の乙女のすずのネタバレレビュー・内容・結末

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

眼に入れても痛くない、無垢でかわいい小さな子供をそのままにとどめておきたいと、どの親も一度は夢想するかもしれない。そんな淡い願望をこの両親はやってのける。この手の集団を世では洗脳やカルトと言う。子供を育てるのは親であるが、同時に社会が個々を人たらしめる。彼らは成熟した大人の身なりにも関わらず、最低限で当たり障りのない知識と多くの出鱈目を吹き込まれて、幼少期の子供のような精神状態で戯れながら暮らしている。いかがなものか、邦題は籠の中の乙女。まるでお伽話を思わせるが、原題は犬歯。この猟奇的な物語のクライマックスに重要な意味を持つ。この監督は天才なのか病気なのか、これが観ていて妙にコミカルであるというのが表現として異質である。コミカルでいて突如として暴力的で、恐ろしく悪趣味で不気味で冷酷、凶悪な描写を総じてスタイリッシュな映像に昇華している。特異な才能だと思う。サイコ親父はどうして息子に性行為を教えたのか?どうして犬歯のルールを作ったのか?ほんの僅かな外界の情報が彼らの中では驚異的な好奇心に繋がり、閉じ込められていた自我が急速に芽生え始める。違和感を抱き、混乱し、動揺していく彼らが、だんだんと世俗的で下品な行為を覚え及んでいくところがまた皮肉でもあった。
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