ハリ

光の旅人 K-PAXのハリのネタバレレビュー・内容・結末

光の旅人 K-PAX(2001年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ひったくり現場にプロートと名乗る身元不明の男が突如表れ的を得ない解答を繰り返す。精神疾患患者として精神病院へ入院措置が取られるが、その男は"K-PAX"という惑星からやってきた宇宙人であるという話を始める。

ふーんSF映画ね→え?ヒューマンドラマ!?→おぉ、最後はSFか…という形で進んでいき、起伏の無いストーリーであるにも関わらず次が気になって仕方の無いストーリー展開だった。

プロートと交流する精神疾患患者は皆症状が落ち着いていき、主治医のパウエルもプロートが何者なのか次第に興味を惹かれるようになる。
精神科医のパウエルやその同僚達は精神疾患患者に対して対症療法しかしようとしない、何もしないのが一番の治療法だと決めつけるように患者に接しているが、プロートだけは違っていた。治療の本質というものに触れて一人一人に手を差し伸べているようだった。

異星人であるということを信じず、催眠療法を使いプロートの過去を調べてプロートは実在している人間であるということを突き止めるが、プロートは強盗に母子を殺害され自殺を図るというとてつもなく凄惨な過去を背負っていた。そしてパウエルはプロートの本名であるロバートポーターという名を知る。

プロートの過去に触れる事でパウエル自身も今現状の自分の生き方を見つめ直すきっかけを得た。精神疾患を治す為にプロートに接していたはずだが、パウエルもまたプロートに心の奥底に抱え込んでいるわだかまりを解きほぐされたのだ。プロートの悲惨な過去を受け、自分自身がもう一度家族と向き合う気持ちが生まれる事になる。大切なものを失う前に。

ラストではプロートが光に包まれてK-PAXに帰ったとされるが、そこに居たのは廃人になっているロバートポーター。代わりに、精神疾患患者の女性が居なくなっていた。プロート=ロバートポーターでは無く、人間の心を宿主として生活するプロートというK-PAX星人が次の宿主に入って新たな場所に旅立った事を示唆する終わり方。言及はされていないので真相は不明だが…。

プロートが地球人なのか、異星人なのかはどっちでも良く、自分にとって本当に大切なものを気付かせてくれたプロートに感謝の念と、今まで本当の意味での治療を患者達に出来ていなかった後悔の念で廃人となったロバートポーターに寄り添うかのような終わり方。

中々に見入ってしまった。心地よく流れるBGMとゆったりとしたストーリーが相まって謎を深めていくので次がどんどん気になり最後まで中弛みが無かった。地球規模の話から家族愛という所に着地したが、そんなに不自然でも無かったように思う。
個人的評価:名作
ハリ

ハリ