【第5回カンヌ映画祭 パルムドール】
ハリウッドを追われたオーソン・ウェルズが紆余曲折を経てモロッコで完成させたシェイクスピア悲劇。短期間公開されたもののフィルムが行方不明になり幻の作品と言われていたが、20世紀FOXの倉庫で奇跡的に発見され修復された。
素晴らしい!オーソン・ウェルズの陰影の美学とシェイクスピア悲劇が見事に溶け合った傑作。
冒頭の葬列シーンから「あぁ、オーソン・ウェルズの映画だなぁ」と実感できる。暗闇の中の顔、逆光で撮影された影の人々…あまりにも芸術的だ。
シェイクスピア独特の台詞回しに振り回されることなく、緩急のついた演出でオセロの悲劇を描ききっている。
中盤の酒樽のある地下でのシーン、終盤の妻殺害シーン、キャシオ謀殺シーンの陰影を駆使した美しく品のある画面づくりには舌を巻く。
最近『マクベス』が白黒で映画化されたけど、それと比べても全く遜色のない芸術的で美的な映像表現。
オーソン・ウェルズのオセロは言わずもがな、悪役イアーゴを演じるマイケル・マクラマーの禍々しさ、清純な妻デズデモーナを演じるシュザンヌ・クルーティエの美しさ…全てが見事。
カンヌ最高賞に相応しい傑作。