映画男

いれずみ半太郎の映画男のレビュー・感想・評価

いれずみ半太郎(1963年製作の映画)
3.0
マキノ雅弘の自伝を読むと、青年時代、家の借金を背負って借金取りから逃げ続け、金策に駆けずり回っていたことが書かれている。家族にも頼れなかったそうだ。それを踏まえて本作を観ると、やはり半太郎の背後にはマキノの姿が見えてくる。逆にそれを知らずに観てしまうと、マザコン気質な半太郎や、甘ったるい描写に辟易してしまうかもしれない。見方を変えれば職業監督であるマキノが充分に映画作家であると証明しているともいえる。しかし、男女の逃避行モノは無条件に愛してしまう小生だが、マキノの自伝を読んだ上でも、本作が少々退屈であることは否めない。眠たい目をなんとかこじ開けながら鑑賞していたが、後半でハッとする状況に出会った。それは半太郎と女郎の女が隠れ蓑にしている納屋の設計である。ボロい戸を開けると伽藍とした、夜でも明かりの灯らないスペースがあり、奥に進んで曲がったところにほんのりと明かりがついており、そこに病に伏せる女郎の女がいる。何が言いたいのかというと、この納屋の設計だけで、二人の歩む旅路の残酷さと、ここが二人にとって、最後の救いの場所であることが、一目瞭然で伝わってくることが、ほんまにすごいとおもうということだ。腕に「おなか」と刺青を入れたって、笑っちゃいけねえ。
映画男

映画男