シズヲ

オクラホマ・キッドのシズヲのレビュー・感想・評価

オクラホマ・キッド(1938年製作の映画)
3.5
まだ『駅馬車』も出てない頃の作品だけど意欲的な要素が見え隠れする西部劇。ジェームズ・キャグニーVSハンフリー・ボガートという対戦カード、ギャング映画やノワール物の趣があって何だかおもろい。饒舌なキャラクターを活かして奔放で飄々とした主人公を演じるキャグニー、ふてぶてしく憎たらしくもどっしり構えた悪役を演じるボギー、両者の個性のぶつかり合いがやっぱり印象的。宿の部屋を占領する男達を追い出すシーンなど、キャグニーの小気味良さが要所要所で光る。銃を抜くときは実に手早く抜いてみせる辺りにもギャング的なイメージを連想する強かさを感じてしまう。

80分前後という尺でコンパクトに収まった娯楽作で、ちらほら印象に残るアクションが見受けられるのが良い。ランドラッシュのシーンは『三悪人』程ではないにせよ中々の物量と疾走感だし、判事が乗った駅馬車を主人公が追いかけるシーンは見事な乗馬スタントも相俟ってスリリングで面白い。また序盤では“杭が打たれた場所を起点に即興のコミュニティが作られ、そこから簡素な木造建築が次々に建てられていく……”という開拓地における町の勃興と発展がテンポよく描かれるのも面白い。

この時代の西部劇としてはリベラルな視点が描かれてて、ランドラッシュに対する「僅かな補償でインディアンを無理やり追い出して土地を奪う」という主人公の言及は特に顕著。「まず弱い者が強い者から奪い」「今度は賢い者が更に奪っていく」という台詞は核心的。とはいえあくまで持論程度に留めており、それ以上の議論はしない辺りに時代性の限界めいたものを感じる。それはそうと主人公、インディアンに渡す銀貨を強盗から奪い返したのにその後普通に自分で使ってるのは奇妙だ。

また本作の場合はあくまで悪党に牛耳られた結果とはいえ、『牛泥棒』を思わせる秩序の腐敗と暴力的な私刑が描写されるのも印象的。戦前の時点でこの辺りに切り込むのは中々に大胆。“権力の暴走を打倒するのは秩序の外に出たアウトサイダー的暴力”というのは典型的な西部劇理念でもあるんだけどね。そして余談ながら主人公の兄貴、主人公とヒロインのロマンスを成立させるために良い感じのムードで排除された感はなくもない。
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