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ミッドナイト・イン・パリのYYamadaのレビュー・感想・評価

ミッドナイト・イン・パリ(2011年製作の映画)
4.0
【タイム・パラドックス佳作選】

◆パラドックス発生の方法
〈タイム・トラベル〉
 →パリ市内に深夜12時に出没する、アンティークカーに搭乗する。

〈見処〉
①パリを舞台とした「偉人伝」
・『ミッドナイト・イン・パリ』は、2011年のパリで撮影した「アメリカ映画」。ウディ・アレンが脚本と監督を務め、第84回アカデミー賞では脚本賞を受賞。アレン作品で最も稼いだ映画となった。
・舞台は現代のフランスの花の都、パリ。ハリウッドで売れっ子の脚本家ギル(オーウェン・ウィルソン)は、婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)と彼女の両親とともにパリに遊びに来ていた。
・パリの魔力に魅了され、小説を書くためにパリへの引越しを決意するギルだったが、イネズは無関心。
・ある夜の12時、ギルは酒に酔ったままパリの街をうろついていると、アンティークカーが止まり、クラシックな格好の男女女がギルを誘う。彼らに同行した先は、ジャン・コクトーのパーティ。そこはギルが黄金時代と評し、愛して止まない1920年代のパリに来ていたことに気づく…。
・本作はタイムトラベル作品にありながら、パラドックスにまつわるエピソードは発生しない。F・スコット・フィッツ・ジェラルド(小説家)、コール・ポーター(作曲家)、ジャン・コクトー(詩人)、アーネスト・ヘミングウェイ(小説家)、パブロ・ピカソ、サルバドール・ダリ(ともに画家)…非常に良く似た俳優陣が扮する「偉人たち」を垣間見ることが出来る作品である。
・なお、本作のポスターに採用された絵画『星月夜』の作者であるゴッホは、本作には登場しない。

②「ベル・エポック」
・ウッディ・アレンは「パリの真夜中」というタイトルを思いつき、脚本を執筆。
・アメリカ人にとって、歴史の薫りが強いヨーロッパ、特にパリへの憧れは強く、そのようなアメリカ人像をアレンは本作の主人公ギルに投影。
・また、本作で印象的なのは、現代に生きるギルは「1920年代」を好み、1920年代に生きるピカソの愛人、アドリアナにとっては「1890年代」こそが「ベル・エポック」(美しき時代)だと言う。
・数多の人々は「昔のほうが良かった」という考え方を批判的に描いた作品である。いつの時代も、民衆は現況に満足しないのだから、ベル・エポック自体が存在していないと訴えているようだ。

③結び…本作の見処は?
○: ともにパリを散策しているような旅情溢れる作品。特に冒頭2分間はNHKの旅ドキュメンタリーのようだ。作中に『ビフォア・サンセット』の古書籍店も登場。
○: タイムトラベル映画としての見処は、偉人達との交流くらい。どの時代を生きる人も、本質は変わらないことを示唆している。ウディ・アレンの温かみある演出を楽しむ作品。
▲: 本作のレイチェル・マクアダムスはイヤな奴。
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