ゲイ・ティーンのリアルライフを描き続けたアメリカの鬼才、グレッグ・アラキによるヒリついたアメリカの若者やポップカルチャーを象徴化し、90年代後半の荒廃を切り取ったようなニヒリズムが溢れ出した不条理なロードムービー。
「地獄へようこそ」と書かれた真っ赤なクラブ。若いカップル、エイミー・ブルーとジョーダン・ホワイトの2人は青年Xを拾い、3人で一緒にセックスと暴力に満ちた逃避行を繰り広げるという物語。
本編中に何度も出現する悪魔の数字666が3人に呪いのようにつきまとい、行く先々で出会った他人は皆何故かエイミーを知っていて、様々な名前で呼び、彼女をぶっ殺そうと思っている。
生首が飛んで喋る。ふざけたニュースが流れる。腕が飛ぶ。割と人が死ぬ。そのスピード感に少し笑ってしまう。カラフルなインテリアもまた可愛らしい。性器のスラングが死ぬほど出てきて勉強?になる。
そしてセックスという救いしかない彼らは痛々しい程に絡み合う。
エイミーを演じるローズ・マッゴーワンは一夫多妻制の児童性的虐待などの疑いで悪名高い宗教カルトの両親の元に生まれ、15歳にして親から独立し、本作で女優として見出され、この3年後にはマリリン・マンソンやロドリゲスの婚約者になったりと、人生そのものがジェットコースターのよう。
彼女はエイミーという役に最も近く、同化してしまっているように感じました。小生意気な女の子の止まらない暴言が魅力的。
あんなアメリカの終わりを誇張したような盛大で凄惨なフィナーレがあっても、結局人は前に進むんでいくしかできないんだろう。
3人の名前の色を合わせて完成していた星条旗の色が減っても、アメリカはあり続ける。
激しい映画だった。