けーはち

眠狂四郎 女地獄のけーはちのレビュー・感想・評価

眠狂四郎 女地獄(1968年製作の映画)
3.6
飄々とした貧乏剣士の伊藤雄之助、暗い出自を隠して闘う田村高廣(田村正和のお兄さん)……市川雷蔵=眠狂四郎10作目はゲスト剣士と三つ巴で拮抗する。某藩のお家騒動が契機だが、眠狂四郎は当然権力闘争など何処吹く風、キーパーソンのお姫様を両陣営から匿う。それでも土壇場で肉親の情に殉ずる悲運の男がいては、ついお節介の一つも焼きたくなる伊達男。妖剣・円月殺法に対峙してもなお斬られずに物語を終えるゲスト剣士の末路は本シリーズ屈指の変化球ではあるが、己の呪われた出自ゆえ無縁の肉親の情に滅法弱い狂四郎の機微も相まってストーリー的には一番泣ける。渡辺岳夫の音楽はブラスバンドに対し震えるフルート、ギターがリードを取って哀愁を誘う演歌調で現代人の思う時代劇の空気に近くなった。

ところで本シリーズのタイトルは粗雑に付けすぎだが、特に本作の「女地獄」はあまりにも。女と刺客のわんこ蕎麦は健在だが本作の主眼はゲスト剣士二人との鼎立関係なので……