似太郎

青春の蹉跌の似太郎のレビュー・感想・評価

青春の蹉跌(1974年製作の映画)
5.0
【醜悪の極み】

10代の頃にビデオで観た。アンゲロプロスの『旅芸人の記録』とセットで。私の中では懐かしい思い出である。

今だったらSMAPのキムタク主演で撮ったATG映画みたいな感じかなー?とにかく全編暗くてドヨ〜ンとなる。原作は石川達三のベストセラー小説。

アンゲロプロスの高尚な雰囲気には全くついていけなかったのだが、神代辰巳の長回し映像の臨場感は全く別種のモノのように感じる。ゴジの『青春の殺人者』同様アンダーグラウンドな趣向である。やはり本作でも姫田真佐久のカメラワークが傑出している。

若き日の森本レオと桃井かおりが出ておりそちらも大いに懐かしい感じがするのだが、とにかく神代辰巳らしい土俗的な和歌の挿入やシュールなカット割、即興的な演出など長谷川和彦の書いたシナリオとベスト・マッチングしている。(本作はそんな長谷川のカラーが強め)

少なくとも同じコンビによる『宵待草』ほどグダグダな感じはなかった。この映画の家庭教師役のショーケンはホント〜に卑劣漢だね。学生運動をドロップアウトした腐り切った元・新左翼の落ちっぷりが見もの。教え子( 檀ふみ)と心中しようとするシーンは特に陰鬱。

70年代らしいニヒルで白けた雰囲気は初期大友克洋の短編漫画に近いものがある。(むしろ大友が本作をパクってるのか?)
起承転結の無いストーリーにブツ切れで終わるラストが衝撃的。😅
似太郎

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