イチロヲ

青春の蹉跌のイチロヲのレビュー・感想・評価

青春の蹉跌(1974年製作の映画)
4.5
反骨精神を滾らせているエリート大学生(萩原健一)が、物憂げな少女(桃井かおり)と将来有望な令嬢(檀ふみ)を対比させながら、人生の意味を模索していく。石川達三の同名小説を映像化している、青春ドラマ。日活の神代辰巳が東宝に招聘されている。

安保闘争直後に発生した「シラケムード(生き甲斐を失った状態)」を背景にして、長谷川和彦の自伝的脚色を施している作品。通過儀礼に直面した若者の焦燥と反抗が、神代の映画術により軽やかに描写されている。

大人のエゴにより成長を強制させられる若者が自己のエゴを暴発させる、というグロテスクな人間模様が展開。桃井かおりとは「本能」の関係、檀ふみとは「自我」の関係。本能と自我のシーソーゲームを推量すると味わいが増す。

特別出演者では、歩行者天国で物乞いするヒッピー役で芹明香が登場。また、ラストの雪中シーンでは、「恋人たちは濡れた」の馬跳びを彷彿とさせる感情のぶつけ合いがあり、まさに神代ファン垂涎といえる。
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